[I-P02-5-01] 無脾症候群における侵襲性肺炎球菌感染症に関する検討:肺炎球菌結合型ワクチンの定期接種導入前後での比較
キーワード:無脾症候群, 侵襲性肺炎球菌感染症, 肺炎球菌結合型ワクチン
【緒言】2013年11月の13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)定期接種導入により、小児の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発生率は減少したとの国内の報告があるが、無脾症候群の患者における報告はない。【目的】当院管理中の無脾症患者におけるIPD発生率と臨床像を、PCV13定期接種導入前後で比較する。【対象】1989年9月から2023年1月に当院に通院歴のある無脾症患者84例を対象とした。【方法】1989年9月から2013年10月まで(A群)と2013年11月から2023年1月まで(B群)のIPD発生率を人年法で比較し、IPD発症例を診療録より後方視的に検討した。なお当院では定期接種開始前は、2歳以上で23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の5年毎接種を推奨し、抗菌薬の長期予防投与は行わない方針であったが、開始後は上記に加え、スケジュール通りのPCV13定期接種を推奨している。【結果】A群は64例、B群は53例、33例は両期間に重複していた。IPD発症はA群で5例、B群で2例、計7例。IPD発生率はA群の1170(対10万人年)に対し、B群は659(対10万人年)と減少していたが、有意差はなかった。IPD発症7例の年齢の中央値は1歳3ヵ月(0歳7ヵ月~4歳5ヵ月)であった。IPDの病型は、菌血症が7例、髄膜炎・関節炎は0例であった。A群はPPSV23接種1例、未接種4例、B群はPCV13の3回接種1例、4回接種1例であった。B群のIPD発症2症例3件数の肺炎球菌血清型は、7C、23B、24Fであり、PCV13でカバーされない血清型だった。IPDによる死亡例はなかった。【考察】PCV13定期接種導入前後で無脾症患者のIPD発生率は減少していたが、有意差はなかった。PCV13でカバーされない血清型もあるため、無脾症患者のIPD発症には今後も注意を要する。