[I-P02-5-04] 日本における先天性心疾患新規発症5年間(2017-2021年)のまとめ
キーワード:先天性心疾患, 疫学, 小児期発生心疾患実態調査
【背景】近年の報告では先天性心疾患(CHD)は1000人あたりの出生数は9.0-13.6人と報告されている。一方で、一次予防・二次予防に関する知見の蓄積や、治療の大きな進歩により患者自身が自身の子を持つ機会が増加するなど、CHDを取り巻く環境は変化し続けておりCHD発症の現状を知ることは患者家族へ正しい情報を伝えるために必要である。日本からの報告は限られるが、全ての修練施設が小児期発生心疾患実態調査に参加し、小児循環器学会データベース小委員会が結果をまとめている。【目的】日本におけるCHD発症の近年の動向を明らかにすること、他国の報告と比較し違いを検討すること。【方法】2017年から2021年に行われた小児期発生心疾患実態調査結果を使用した。CHD35疾患を抽出し、各年の合計および疾患ごとの発症率を生後早期に診断されると考えられる重症心疾患11疾患と、それ以外の疾患に分けて検討し、アメリカの報告とも比較した。【結果】5年間の日本の全出生数は4,382,242名、登録された全ての心疾患患者は59,633名であり、1,000出生あたり13.6名(95%信頼区間 13.1-14.2)であった。重症心疾患患者は12,328名、1,000出生あたり2.8名(95%信頼区間 2.6-3.0)、その他の心疾患は47,305名、1,000出生あたり10.8名(95%信頼区間 10.4-11.2)であった。調査期間において出生数と同様に心疾患患者の発生数は減少したが、全心疾患の発生率や重症心疾患を含む各疾患の発生率に経年的な傾向は認めなかった。アメリカの報告と比較すると、ファロー四徴症は日本人で有意に頻度が高く、房室中隔欠損症、左心低形成症候群、完全大血管転位症はアメリカで頻度が高かった。【結論】日本におけるCHD発生率は既報と同様であり、5年間での変動も少なかったが、海外と比較して日本人で頻度の高い疾患がある。日本人のデータとして今後も継続的なデータの集積と検討が重要である。