第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

集中治療

ポスター発表(I-P03-1)
集中治療1

2023年7月6日(木) 13:30 〜 14:20 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:沼野 藤人(新潟大学医歯学総合病院 小児科)

[I-P03-1-03] 肺動脈弁感染性心内膜炎に伴う出血性心タンポナーデにより心停止し、緊急手術を要した未治療ファロー四徴症(ToF)の9歳女児例

吉沢 雅史1, 須長 祐人1, 河野 洋介1, 本田 義博2, 加賀 重亜喜2, 犬飼 岳史1, 長谷部 洋平1 (1.山梨大学 小児科, 2.山梨大学 第2外科)

キーワード:感染性心内膜炎, 手術療法, ファロー四徴症

【はじめに】小児右心系感染性心内膜炎(RSIE)において、感染コントロール不良で肺塞栓を合併した場合、外科治療の適応となる。一方、外科治療を要する場合に多くは人工物を用いるため、RSIEおける抗血栓性の低さも相まって、再発を含めた術後管理に難渋する事がある。今回我々は疣贅による広範な肺塞栓および出血性タンポナーデにより緊急手術を要した9歳の未治療ToF症例を経験した。急性期管理と感染及び塞栓症のコントロールを両立させる事を目的とし、段階的な根治術を実施した。【症例】ファロー四徴症、22q11.2欠失症候群の女児。9歳時に発熱・関節痛を主訴に受診。MSSAの感染性心内膜炎と診断し、抗生剤治療を開始したが血液培養は陽性が続いた。造影CTで肺動脈弁から左右肺動脈まで進展する疣贅が確認された。肺動脈壁からの出血によりCPAとなりECMO導入後に緊急手術となった。肺動脈弁は完全に除去、肺動脈内の疣贅を除去したのち肺動脈天井をグルタールアルデヒド処理した弁なしの自己心膜パッチで形成した。心室中隔欠損はePTFE patchで閉鎖した。肺動脈逆流による右心系負荷は利尿剤の内服でコントロールすることができ抗生剤治療で疣贅の消失が確認されたが、VSD patchの縫合糸が一部外れ右室流出路狭窄を呈したため術後11週間の抗生剤加療後に再手術(VSD patch閉鎖 + 3弁付きePTFE conduitによる右室流出路再建)を施行した。再手術後の経過は良好であり入院119日目に神経学的後遺症なく退院した。【考察】本症例は感染コントロール不良な肺動脈弁位のIEであるため、術後、疣贅の再発による肺塞栓や血栓症のリスクが高いと考えられた。まず、肺動脈天井を弁なしの自己心膜で形成し、感染及び血栓症のコントロールが良好となった段階で根治術を実施することができた。感染急性期に自己組織のみで肺動脈形成を行ったことが救命の一助となったと考えられる。