[I-P03-1-05] Fontan術後の集中治療期間に及ぼす因子の検討
キーワード:Fontan手術, 集中治療, 術後管理
【背景】長期の集中治療はFontan術後の予後不良因子と知られているが, 本邦からの報告は限られる. 今回Fontan術後の集中治療期間に影響する因子を後視的に検討した.【方法】2018-22年の5年間に当院でFontan手術を実施した197例のうち, 早期死亡とtake downした症例を除いた194例(年齢 37か月, 体重 11.5kg)を対象とした. 術後のPICU・HCU滞在期間が14日以上の群(n=67)と14日未満の群(n=127)に分け, 各種パラメータ(患者背景, 術前の血行動態, 術中・術後の所見)との関連を検討した.【結果】長期集中治療の原因として, 14日以上のカテコラミン投与やNO吸入, 不整脈が44例, 持続する胸水が39例, 菌血症や縦隔炎が16例と多かった. 単変量解析では, 低年齢 (中央値 33 vs. 39 か月, p=0.006), 低体重 (10.9 vs. 11.6 kg, p=0.02), 右室 (73.1 vs. 50.9 %, p<0.001), HLHS (40.3 vs. 17.3 %, p<0.001), 高いグレン圧 (7.5 vs. 6.5 mmHg, p<0.001), 小さいPA index (233 vs. 259, p=0.005), 長い手術時間 (423 vs. 372 min, p=0.002), 高い術後CVP (13 vs. 12 mmHg, p=0.006) で有意差がみられた. 多変量解析では, 長期集中治療のリスク因子は, 長い手術時間 (unit odds ratio[uOR]:1.00, 95% confidence interval [CI]:1.00-1.01, p=0.009), 高いグレン圧 (uOR:1.25 95% CI:1.05-1.48, p=0.01), 右室 (uOR:2.25, 95% CI:1.12-4.59, p=0.02), 低年齢 (uOR:0.97, 95% CI:0.95-0.99, p=0.03), 高い術後CVP (uOR:1.26, 95% CI: 1.001-1.58, p=0.049)であった.【結語】本研究で高いグレン圧, 主心室(右室)や低年齢がリスク因子であった. 近年, 高リスク症例のFontan手術が増加している傾向があり, 今後は術前の状態を少しでも整えることに加え, 術後感染症等の二次的要因を減らすことが課題となってくる.