[I-P03-1-06] コントラストエコー後に心停止を来した1例
キーワード:バブルテスト, 冠動脈瘻, 右室依存性冠循環
【背景】コントラストエコーは,卵円孔開存に伴う潜在性脳梗塞や,単心室疾患の肺動静脈瘻など右左シャントの診断に頻繁に用いられる.合併症として脳梗塞が0.15%程度起こるとされるが,その他の重篤な有害事象の報告は少ない. 今回,冠動脈右室瘻を有する肺動脈閉鎖症(PAIVS)で,両方向性グレン手術(BDG)術後の低酸素血症の原因検索目的に施行したコントラストエコー後,心停止に至った症例を経験したので報告する.【症例】胎児機能不全のため在胎32週3日1554gで緊急帝王切開にて出生し、生後心雑音を契機にPAIVSの診断となった.Lipo-PGEを開始し,肺血流量は安定して経過した.日齢96 3.2kgで心房中隔裂開術,冠動脈造影を施行し,右冠動脈は右室依存,左冠動脈も2か所で右室へ瘻孔を形成していた.この結果からBTシャント術は冠血流低下の懸念があり,初回手術をBDGにする方針とした。体重増加を測り,月齢4か月4kgでBDGに到達した。術後2日目, SaO2:60%台の低酸素血症の原因検索目的に,コントラストエコーが実施された。直後に徐脈から心停止となり,ECMO管理となった.エコーでは右室内に徐々に充満するバブルと冠動脈内に停滞するバブルが描出されていた.心機能は経時的に改善し,導入3日目に静脈シャントの結紮を加えてECMOを離脱した.その後カテーテル治療, 内服調整を行い術後3か月で退院し現在外来で経過観察中である.【考察】バブルは,静脈シャントを通じて左房,左室,大動脈,冠動脈瘻を通じて右室内に到達,右室依存冠動脈へ流入するとともに,瘻孔により両方向性の血流方向を示した左冠動脈内でのバブルの停滞により冠血流が阻害されたと考えられた.本症例のように特殊な血行動態の場合,コントラストエコーは重篤な合併症に繋がることがあり,事前に血行動態への影響と,適応について十分に検討する必要がある.