[I-P03-2-03] T波交代現象を認めた心室中隔欠損による高肺血流性心不全症例の検討
キーワード:T波交代現象, 心室中隔欠損, 高肺血流性心不全
【背景】T波交代現象 (TWA) は、再分極の不均一性の増大を反映している心電図所見で、致死的な心室性不整脈に先行することがある。これまでQT延長症候群や急性心筋虚血、重症心不全などで報告されているが、心室中隔欠損 (VSD) による高肺血流性心不全での報告はない。【目的】肉眼的にTWAを認めたVSD症例について検討する。【方法】2017年12月から2022年12月に当院で心内修復術を施行したVSD症例のうち、術前心電図でTWAを認めた症例について後方視的に検討した。【結果】対象となったVSD症例105例 (女児 44例 (42%)、平均年齢 15.6 ± 2.2ヶ月) のうち、4例に術前心電図でTWAを認めた。TWA症例は男児 2例、女児 2例で、平均年齢は3.0 ± 1.0ヶ月、全例6ヶ月以下の乳児であった。欠損部位は、3例が膜性部から流出路で、1例が筋性部であった。心エコーでの左室拡張末期径は、正常の134.5 (118.3 – 137.3) %であった。TWAの記録された心電図では、心拍数 143 (138 - 148) bpm、補正QT時間 407 (392 - 425) ms (Bazzet)、354 (338 – 367) ms (Fridericia) とQT延長は明らかではなかった。TWA症例のうち1例について、術前に12誘導Holter心電図を施行したところ、HR上昇時を中心に断続的なTWA出現を認めたが心室性不整脈はなかった。本症例でQT延長症候群やカルシウムトランジェントに関連する遺伝子の一部について検査を行ったが変異は同定されなかった。メキシレチンを開始したところ、TWAは完全には抑制されなかったものの、心室性不整脈の発生はなく経過した。その他3例については、周術期に心室性不整脈を認めた症例はなかったが、1例で術後に心房性期外収縮が頻発したため、プロプラノロールを開始したところ減少した。【結論】VSDによる高肺血流性心不全症例において、TWAを認めた症例は全例6ヶ月以下の乳児であった。本病態における心室性不整脈発生の危険性については、より多数例での検討が必要と考えられた。