[I-P03-2-08] 1型糖尿病によるケトアシドーシス加療中にtorsades de pointes認め診断に至った先天性QT延長症候群の一女児例
キーワード:先天性QT延長症候群, 糖尿病性ケトアシドーシス, torsades de pointes
背景:QT延長症候群(LQTS)は多源性心室頻拍を引き起こす可能性のある致死的な疾患である。LQTSは先天性と二次性に分類され、心イベントリスクはQT時間、性別、遺伝的背景、年齢によって分類される。今回、先天LQTS二次性LQTSを合併し、入院中にtorsades de pointes(TdP)を認めた症例を経験したので報告する。症例:2歳5か月の女児。入院2ヶ月前より多飲多尿、入院前日より活気不良、入院日に前医を受診し高血糖(363mg/dl)、代謝性アシドーシス(pH 7.168, HCO3- -5.1 mEq/l)を認め、糖尿病性ケトアシドーシスの診断で入院となった。入院時の心電図でQT時間(600ms)延長を認め、二次性LQTSを疑い糖尿病治療と共に原因精査を進めた。入院2日目にT wave alternans、一過性TdP(16拍)を認め、LandiololおよびLidocaine持続静注を開始し、血糖およびカリウムの厳密な補正を行うことでTdPの再燃を認めること無く経過し、β遮断薬内服へ移行出来た。退院時にはQT時間446ms、遺伝子検査よりKCNH2バリアント(c.1096C>T, p.Arg366Ter、Pathogenetic)が判明し先天性LQTS2と診断し、家系内検索により父にQT時間459ms とKCNQ1/KCNH2バリアント(c.1343C>G, p.Pro448Arg, c.1096C>T, p.Arg366Ter)が判明した。現在、本人はβ遮断薬およびK製剤、父はβ遮断薬内服により経過観察中である。考察:LQTSは遺伝性不整脈疾患の一つである先天性と薬剤等に伴う二次性に分類されている。今回、先天性LQTSに糖尿病と低カリウム血症を合併した症例を経験した。本症例は遺伝的背景に加えQT時間を延長させる二次性要因が加わることで更にQT時間は延長し、TdPの出現により確定診断に至った。特に糖尿病治療急性期において高率に低カリウム血症を来すためTdPリスクが増大すると考えられ注意が必要である。結論:先天性LQTSの患者では二次性要因を伴う全身疾患の合併によりTdPリスクが増大すると考えられ注意が必要である。