[I-P03-3-05] 小児のがん治療関連心筋障害における左房ストレインの有用性
Keywords:がん治療関連心筋障害, スペックルトラッキング, 左房ストレイン
【はじめに】がん治療関連心筋障害 (CTRCD)は、診断後早期に心保護薬を開始することで心機能の改善が得られる。成人がん患者において左房ストレイン、特に左房リザーバー機能が従来の指標である左室EFやGLSより早期に変化を示す報告があるが、小児がん患者ではその有用性が明らかではない。【方法】2021年8月から2023年1月の期間に、当院でアントラサイクリン系抗がん剤による化学療法を施行した患者を対象とした。左室GLSや左房ストレインは、二次元スペックルトラッキングを使用してアントラサイクリン系抗がん剤での治療前後に定量化し、比較検討した。【結果】対象患者は4例で、1例がCTRCDを発症した。平均年齢は7.3歳 (中央値5.6歳)だった。治療前後で左室駆出率、左室GLSは3例で低下し、左房リザーバーストレイン、左房導管ストレインは全例で低下した。治療前後での平均値の変化は以下の通りだった。左室駆出率:66.6% (中央値66.1%)→63.5% (中央値63.6%)、左室GLS:-23.4% (中央値-23.5%)→-21.5% (中央値-21.8%)、左房リザーバーストレイン:42.9% (中央値39.8%)→35.9% (中央値36.4%)、左房導管ストレイン:-36.3% (中央値-34.4%)→-28.6% (中央値-30.6%)、左房収縮ストレイン:-6.6% (中央値-7.1%)→-7.3% (中央値-6.5%)。4例中1例は、治療開始6か月後 (ドキソルビシン換算総投与量380 mg/m2)に、左室EF 54.6% (ベースラインから10.4%ポイント低下)、GLS -19.7% (ベースラインから21.2%減)に低下し、CTRCDと診断した。エナラプリルマレイン酸塩とβ遮断薬の内服を開始し、治療開始11か月後には左室EF 59.1%、GLS -22.1%と改善を認めた。左房リザーバーストレインは、治療開始4か月時点でベースラインから17.6%減少し、左室EFやGLSより変化率が大きかった。【考察】左房ストレイン、特に左房リザーバー機能は、小児においても左室EFやGLSより早期に変化を示し、CTRCDの早期診断に有用な可能性がある。