[I-P03-3-06] 深部静脈血栓症に対して直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が奏功した乳児例
キーワード:深部静脈血栓症, リバーロキサバン, DOAC
【背景】リバーロキサバンは静脈血栓塞栓症の治療・再発抑制に用いられ、2021年1月に小児適応が認められたDOACである。我々は、急性脳症の管理中に右大腿静脈に発症した深部静脈血栓に対してリバーロキサバンを使用し、良好な経過を辿った乳児例を経験したので報告する。【症例】生後11ヶ月の女児。基礎疾患や既往歴や内服歴などはなく、痙攣重積発作で当院の小児集中治療室に入室した。中枢神経管理の際に右鼠径部に中心静脈カテーテル(CVC)を留置した。状態の改善に伴い3日後にCVCを抜去したが、同日夜間に右下肢全体の腫脹を認めた。血管超音波検査を施行したところ、右外腸骨静脈から浅大腿静脈上部まで血栓を認めた。CVC留置に伴う深部静脈血栓症と診断し、ヘパリンの持続静注を開始したところ、徐々に下肢の腫脹は改善した。ヘパリン療法開始6日後に、血管超音波検査で血栓が縮小していることを確認して、ヘパリンを中止し、リバーロキサバンの内服を開始した。以後、出血や肝機能障害などの合併症は認めず、治療開始後3ヶ月の時点で血管の開通性は良好であり、リバーロキサバンを中止したが血栓の再発は認めなかった。【考察】DOACはトロンビンやⅩa因子を選択的に阻害するため食事による影響がなく、服用後速やかに効果を発現する。ワルファリンカリウムと比較して採血による用量調整がなく、併用薬剤や食事の制限が少ないといった利点が挙げられている。本症例では明らかな有害事象を認めず血栓症は改善したが、その使用量や投与期間などについては小児の経験が少なく判断が難しい。これまでの小児例に対する報告では、出血性合併症などが問題点として挙げられており、本症例でも注意を要した。【結語】DOACは小児の深部静脈血栓症に対して、容易かつ安全に使用できる可能性が高い。しかし、使用法については今後の症例の蓄積が必要である。