[I-P03-3-07] 周期性嘔吐症と診断された右側相同・Fontan術後の一例
キーワード:右側相同, Fontan術後, 周期性嘔吐症
【緒言】右側相同の児は先天性心疾患の他に、腸回転異常症などによる腸閉塞を合併する事がある。またFontan術後の遠隔期の合併症として心不全、血栓症、蛋白漏出性胃腸症、肝障害などがあり、これらは嘔吐を認める際には鑑別が必要となる。今回、右側相同・Fontan術後の児の繰り返す嘔吐に対しバルプロ酸ナトリウム(VPA)、トピラマート(TPM)による予防治療が奏功した一例を経験したので報告する。【症例】7歳女児。房室中隔欠損、両大血管右室起始、大動脈縮窄、総肺静脈灌流異常に対し、Norwood術、Glenn術を経て、3歳時にFontan術を施行(いずれも他院)。2歳から月に1度、数日で軽快する嘔吐を認めていた。7歳時に頻回嘔吐と経口摂取不良で入院となった。補液やモサプリドクエン酸投与にて数日で軽快、退院したが、その後も3か月間で4回、同症状で入退院を繰り返した。造影CT上Conduit内に造影ムラを認め、輸液負荷で心臓超音波検査上IVCの呼吸性変動消失を認めたため、Conduit狭窄による中心静脈圧上昇を疑ったが、心臓カテーテル検査(他院)ではCVP:5-6mmHgと上昇なく、また造影上Conduit内に血栓は指摘されなかった。上部消化管造影で胃・十二指腸間で造影剤の排泄遅延があり、胃軸捻転発作も原因として考えられたが、症状と検査所見が必ずしも一致せず全ての経過を説明できなかった。病歴から周期性嘔吐症を考慮し、発作の予防薬としてVPAの内服を開始した。その後TPM内服も追加した所、周期的な嘔吐は消失した。【考察】右側相同・Fontan術後の児の嘔吐の精査として、通常の検査に加え、頭部MRI検査・造影CT検査・心臓カテーテル検査・上部消化管造影検査などが必要となる。周期性嘔吐症は病態の詳細にはまだ不明な点があるが、片頭痛と同じスペクトラムと考えられている。予防治療にはアミトリプチンなどの他、 VPAやTPMなどの抗てんかん薬も使われる。十分な鑑別診断の上で、考慮すべき治療と考えられた。