[I-P03-3-09] 小児循環器診療における負荷試験の有用性〜より臨床に即した評価を目指して〜
Keywords:僧帽弁狭窄, 心臓カテーテル検査, ドブタミン
【背景】心臓カテーテル検査は侵襲度の高い検査だが、血行動態把握や治療方針決定において精度の高い情報を得ることの出来る重要な検査である。一方で、小児の心臓カテーテル検査は鎮静下に施行されることが多く、臨床症状を正確に反映していない可能性があるため、データ解釈を行う際には注意が必要である。【症例】14歳男児。完全型房室中隔欠損症に対して生後8ヶ月時に心内修復術を施行した。術後より僧帽弁狭窄を認め、経過観察を行なっていたが、運動時の易疲労感を訴えるようになったため、治療介入について検討する目的で心臓カテーテル検査を施行した。肺動脈圧は31/12(22)mmHgと著しい肺高血圧の所見はなく、安静時の僧帽弁圧較差(PAWP-LV edp)は5mmHgと軽度であった。運動時の血行動態評価として、ドブタミン負荷(5γ)を行なったところ、心拍出量増大時(CI:4.3→6.29)には肺動脈圧が62/21(36)mmHgまで上昇し、僧帽弁圧較差も20mmHgと顕著な増悪を認め、臨床症状の原因病態と考えられた。弁口面積は1.5cm2であった。【考察】本症例における僧帽弁狭窄症に対する手術適応について検討する場合、1.5cm2はガイドライン上の軽症と中等症の境界域であり、現時点で弁置換手術を施行することは選択肢の1つと考えられる。一方で本症例は安静時や日常生活においては無症状であり、成長期でこれから体格が大きくなる見込みがあるため、運動制限を行うことで弁置換手術を回避することも選択肢となり得る。本症例は最終的に経過観察の方針としたが、ドブタミン負荷により疑似的に運動時血行動態を再現することは、詳細な病態把握に寄与し、特に治療境界域にある患者の治療方針決定において、有用な負荷試験であると考えられた。【結論】労作時にのみ症状を有するような症例において、ドブタミン負荷による血行動態評価は、より臨床に即した病態把握に繋がり、治療選択の際の有用な情報を得ることが出来る。