[I-P03-4-03] フォンタン術後の遠隔期に大動脈基部および上行大動脈解離を発症した症例
Keywords:フォンタン術後, 大動脈解離, 上行大動脈拡大
【背景】大動脈解離は致死率の高い緊急性疾患である。フォンタン術後遠隔期に上行大動脈拡大を来たす症例があることは知られているが、上行大動脈解離の報告は少ない。【目的】当院でフォンタン術後遠隔期に大動脈解離を発症した2症例について、大動脈拡大との関連および大動脈解離するメカニズムについて発生要因を含めて考察し、発症予防と発症前の外科的治療介入時期を検討する。【方法】当院でフォンタン術後遠隔期に大動脈解離を発症した2症例について原疾患、Fontan術時期、上行大動脈径と大動脈弁逆流の有無、大動脈解離発症年齢、治療方法について検討した。【結果】症例1. 36歳 男性 TA(Ⅰa) の診断で7歳時にAPC-Fontan手術およびMVPを施術した。遠隔期に上行大動脈拡大(弁輪 50.2mm,Valsalva 54.1mm,上行大動 47mm) を認めていた。頸部痛と心窩部痛で発症した。心電図と心エコーで冠動脈病変が疑われ、CAG, AoGでLCAに波及するStanford A型解離と判明した。緊急でBentall手術を施術し救命できた。病理組織では中膜の弾性繊維の断裂と粘液変性を認めた。症例2. 19歳 男性 Polysplenia, DORV, CAVV, PS, ARの診断で14歳時にフォンタン手術およびAo annuloplastyを施術した。右肩痛、背部痛で発症した。心エコーで上行大動脈拡大と内膜の断裂が疑われ、造影CTでDeBakey II型、瘤径10.0㎝の解離性大動脈瘤であった。準緊急的にBentall手術を施術した。病理組織では中膜の弾性繊維の断裂と粘液変性を認めた。【考察】症例1は大動脈基部(Valsalva洞)の拡大により冠動脈に波及した解離と考えられ、症例2は上行大動脈瘤の解離であった。2症例ともに大動脈解離直前の大動脈基部および上行大動脈の径は5.0cmを超えており、軽度から中等度の大動脈弁逆流を認めていた。【結論】フォンタン術後においても大動脈径が5.0㎝を超える症例では大動脈解離を発症する場合があり、積極的な介入が必要である可能性がある。