[I-P03-4-04] ネフローゼ症候群治療中にePTFE弁付き導管に血栓性狭窄を生じたファロー四徴・肺動脈閉鎖Rastelli術後の1例
キーワード:血栓狭窄, ePTFE導管, ネフローゼ症候群
【症例】5歳男児。ファロー四徴・肺動脈閉鎖に対し、1歳11か月時にRastelli手術(16mm ePTFE弁付き導管)が施行され、当科外来フォロー中であった。入院2週間前の心エコーでは、PS (ePTFE弁) 2.1 m/s, PR mildであった。入院8日前から眼瞼浮腫、その後全身浮腫が出現し当科を受診し、精査の結果、ネフローゼ症候群の診断で入院した。プレドニゾロン2 mg/kg/day内服とヘパリン持続静注 (12単位/kg/h, 5日間)を開始したが、ネフローゼ症候群はステロイド抵抗性で、尿蛋白の減少効果は乏しく、入院22日目に細菌性腹膜炎を発症、さらに同時期から乏尿・Cre上昇 (1.77 mg/dL)を認め急性腎障害に至った。入院25日目の心エコーでePTFE弁はほぼ1弁しか機能しておらず、残り2弁は肥厚し可動性が著しく低下し、PS 3.9 m/s, PR moderateに悪化、TR 4.0 m/s (PG=64mmHg)と著明な右室圧上昇を認めた。血栓性狭窄を疑いヘパリン持続静注を再開した。治療開始29日目に急性腎障害の治療のため新潟大学に転院した。ヘパリン持続静注に加えワルファリン内服を開始後、次第に弁尖肥厚および可動性の改善、PS軽減(3.0 m/s)を認めた。腎疾患については連日のアルブミン・利尿薬投与、シクロスポリン等の治療が奏功し、尿蛋白減少・腎機能の改善を認めたため、当院への転院を経て、治療開始79日目に退院した。治療開始6か月現在、当科外来でワルファリン内服(目標PT-INR 2~3)を継続し、PS 2.4 m/s前後, PR mild, TR 3 m/s前後で推移している。ネフローゼ症候群の病態が落ち着けば、今後Re-Rastelli手術を行う方針である。【考察】ePTFE弁付き導管を用いたRastelli術後に対する抗血栓療法の有用性は明らかでないが、少なくともネフローゼ症候群等の血栓リスクが高い病態においては、積極的な抗血栓療法の検討と注意深い観察が重要であると認識させられた。