[I-P04-1-01] 完全房室ブロックを合併した小児劇症型心筋炎の単施設後方視的検討
キーワード:劇症型心筋炎, 完全房室ブロック, 一時的ペーシング
【背景】小児劇症型心筋炎に完全房室ブロック(CAVB)を合併することはしばしばあるが,その全体像に関する報告は少ない.CAVBを合併した劇症型心筋炎の臨床像・経緯などについて報告する. 【対象】2010年3月から2023年1月までPICUに入室,臨床的に急性心筋炎と診断し,昇圧剤または機械的補助循環(ECMO)を要したものを劇症型心筋炎と定義し,うちCAVBを合併した症例について電子診療記録を元に後方視的に検討した.【結果】期間中,劇症型心筋炎は29例(男11,女18),年齢は7歳(中央値,0-14),うちCAVB合併例は6例(男1,女5),年齢は9歳(中央値,8-13).病因はウイルス性1例,残り5例は不明.初発症状からCAVBを呈するまでの中央値は1.5日,初診時の12誘導心電図は全例でCAVB+wide QRSであった.CAVB時の心室レートは44(中央値,33-67),収縮不全も全例で認め左室EFの中央値は35%.6例中4例は経静脈ペーシング及び強心薬で対応可能であったが,残り2例では心停止,及び心室頻拍のためECMO管理を要した.経静脈ペーシングは1日(中央値,1-45)継続したが,5例で洞調律に回復し,回復までの時間は1日(中央値,1 -2)であった.1例はCAVBからの回復が得られず,発症45日目に恒久的ペースメーカー挿入術を施行した.免疫グロブリン療法は全例で入室時より実施され,ステロイドを使用した例はなかった.いずれの症例で死亡例はなく,神経学的転帰も良好であった.【考察】劇症型心筋炎の20%にCAVBを合併した.これらCAVB合併例では一時的ペーシングを要するものの,比較的速やかに洞調律へ回復した.しかし初発症状からCAVBに進展する時間は短く急激に循環破綻をきたす例もあるため,入念な観察及び緊急ペーシングが出来る体制が必須である.