[I-P04-1-02] 臍静脈カテーテル留置後に広範な肝石灰化と肝機能障害をきたした左心低形成症候群の一例
Keywords:左心低形成症候群, 臍静脈カテーテル, 肝石灰化
【背景】当院では、出生後早期に外科的介入が予想される先天性心疾患児に対し臍静脈カテーテル(Umbilical venous catheter, UVC)を留置している。UVCの合併症に感染(0.9%)、血栓(0.15%)などがあるが、肝石灰化の頻度は明らかではない。今回、UVC迷入により広範な肝石灰化と肝機能障害をきたした例を報告する。【症例】男児、HLHS(MA/AA)の胎児診断例。38週、3152gで出生。日齢0にUVC2本、臍動脈カテーテル1本を挿入した。UVCは先端がUターンした留置形態となり、位置を2回調整し、高さL1のIVC内と想定される部位に留置した。UVCよりCaやカテコラミンを持続投与した。日齢2に両側肺動脈絞扼術、日齢3に再絞扼した。術後UVCの中心静脈圧が測定できず、位置を再調整したが改善しなかった。日齢5にAST/ALT1543/122U/L,γGTP91U/Lと肝障害を認め、エコーでUVC先端が門脈枝へ迷入しており、速やかに臍カテーテルを抜去した。翌日より肝障害は改善傾向となったが、その後も軽度高値が持続、生後1ヶ月頃よりレントゲンで肝石灰化が確認され、CTでは右葉前区域、左葉の肝実質に広範な石灰化を認め、さらに門脈右前区域、後枝の一部、左枝が鋳型状に石灰化し閉塞していた。門脈圧亢進所見なく、凝固能、血小板数、Alb値は保たれ、アシアロシンチ(HH15=0.393, 正常:0.5-0.6, LHL15=0.952, 正常:0.91-0.96)からも肝予備能ありと判断し、生後2ヶ月時にNorwood手術を施行、術後の肝障害は認めなかった。【考察と結論】UVC留置後肝石灰化の範囲や肝機能への影響は不詳であるが、本症例ではUVC位置を複数回調整しており、UVC先端が肝の複数領域に留置されたために、肝石灰化が広範に及んだ可能性がある。また、UVC先端が門脈枝を閉塞し、そこからの薬物投与が肝障害の一因と推察された。UVC留置時に11.5%が位置異常を認めるとされ、エコーやレントゲン側面像でUVCの先端を確認し、迷入が疑わしい場合は速やかな抜去を考慮すべきである。