[I-P04-2-08] 抗 SS-A抗体陽性の先天性完全房室ブロックに進行性の心不全、弁膜症、上行大動脈弓拡張を伴った乳児例
キーワード:先天性完全房室ブロック, 自己抗体, 心不全
【背景】母体抗SS-A抗体陽性妊娠では胎児の先天性完全房室ブロック(CCAVB)だけでなく心筋障害、弁膜症、上行大動脈弓拡張を起こすことがある。今回母体抗SS-A抗体陽性のCCAVBの児が乳児期に進行性の心不全を呈し、生後4か月時に抗炎症治療を開始した症例を経験した。【症例】母25歳、第1子。在胎25週に胎児心拍50回/分でCCAVBの診断となり母体抗SS-A抗体は256U/ml以上であった。母体ステロイド投与は行わず胎児水腫はなく経過した。在胎38週1日に出生体重2,536g、Apgar score 7/8で出生した。50 回/分の高度徐脈、上行大動脈弓拡張、大動脈弁逆流、肺動脈弁逆流を認め、日齢0にペースメーカー(VVI, 設定レート140回/分)を右室流出路に留置した。術後ジェネレーターが腹腔内に脱落し再留置し、術後心嚢液のためアスピリンを投与した。術直後から心室内非同期を示唆する奇異性運動を認めたが心収縮は保たれていた。生後4か月時に急激に進行する左室内腔拡張、収縮不良(EF biplane 22%)のため緊急入院した。母体自己抗体による心筋障害が影響したと判断し、ガンマグロブリン1 g/kgと全身性ステロイド投与を開始した。【考察】母体抗SS-A抗体に伴うCCAVBでは進行性の拡張型心筋症、心不全を認めることがあり、ペーシングの影響、母体抗体の直接的な心筋障害が知られている。出生後ガンマグロブリン、全身性ステロイド投与を行い改善した症例報告は少数であるが散見される。本症例では進行性の心不全に母体抗体の組織障害が影響したと判断し生後4か月時に治療を行なった。今後治療効果、有害事象を注意深く観察していく。