第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

電気生理学・不整脈

ポスター発表(I-P04-2)
電気生理学・不整脈2

2023年7月6日(木) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:畑 忠善(藤田医科大学ばんたね病院 臨床検査科)

[I-P04-2-09] ゲノム診断により迅速な治療薬最適化を得たAndersen-Tawil症候群の1例

林 賢, 山川 勝, 青田 千恵, 宮越 千智 (神戸市立医療センター中央市民病院 小児科)

キーワード:Andersen-Tawil syndrome, ゲノム解析, 心室頻拍

【背景】Andersen-Tawil syndrome (ATS)は、KCNJ2遺伝子変異によるKチャネル機能障害が基本病態であり、突然死イベントを発生し得る心室性不整脈、周期性四肢麻痺、特徴的外表奇形をphenotypeとする。カテコラミン誘発心室頻拍(CPVT)と相似の二方向性心室頻拍を呈するが、薬剤反応性は相異する。今回、学校検診で二方向性心室頻拍を指摘され、β遮断薬抵抗性であったが、ATS genotype診断に基づく薬剤選択が奏功した症例を経験した。【目的】ATSの診断および治療選択におけるゲノム解析の有用性を示すこと。【症例】13歳女児。中1学校心臓検診で多形心室頻拍を指摘、当科紹介された。自覚症状なく、四肢脱力や失神の既往なし、身体所見上も明らかな異常を認めず、家族歴に失神や突然死はなかった。エコー上器質的心疾患なし。ホルター心電図で心室性期外収縮(PVC)は全心拍中21.1%で、最長46拍(196bpm)の両方向性・多形心室頻拍を認めた。トレッドミル運動負荷試験では心拍数 150bpmまでPVCは残存したが、明らかな悪化はみられなかった。心室頻拍波形よりCPVTを疑いβ遮断薬を開始したが、PVCの頻度、心室頻拍の持続および速度に有意な改善は見られなかった。ゲノム解析でKCNJ2遺伝子の病原性変異を認めATS genotypeと診断、flecainideを開始したところ、PVCは全心拍の0.5%に減少し、2連発までとなった。【考察】ATSに対しては、β遮断薬抵抗性およびflecainideの有効性を示唆する複数の報告がある。本症例においては、phenotypeによる診断が容易でなく、genotype同定が薬剤選択の速やかな最適化に有用であった。【結論】遺伝性不整脈症候群に対するゲノム解析の導入は、学校心臓検診の事後管理に貢献している。