第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスター発表

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ポスター発表(I-P04-3)
その他2

2023年7月6日(木) 14:30 〜 15:20 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:連 翔太(福岡市立こども病院 循環器科)

[I-P04-3-06] 先天性心疾患の術後遠隔期に診断した肝外型門脈体循環シャント

井福 俊允1, 山下 尚人1, 横山 亮平1, 永田 弾2, 坂本 一郎3 (1.宮崎県立宮崎病院 小児科, 2.九州大学病院 小児科, 3.九州大学病院 循環器内科)

キーワード:門脈体循環シャント, 先天性心疾患, カテーテル治療

【背景】先天性門脈体循環シャント(CPSS)は稀な発生異常である。門脈系から分岐する異常血管が直接体静脈にシャントとして流入し、高アンモニア血症や肝肺症候群、肺高血圧、脳症などの多彩な合併症を生じうる。無症候例も存在し、臨床像は様々である。【症例】25歳男性。新生児期にファロー四徴症と診断され1歳時に心内修復術、17歳・21歳時に肺動脈弁置換術を施行された。また、学童期に自閉スペクトラム症と診断され支援学校を卒業後は施設通所しながら軽作業に従事していた。以前から不定期に倦怠感や易疲労感を訴えることがあり、22歳時に抑うつ状態が悪化し近医精神科で睡眠薬・抗うつ薬投与を開始された。同じ頃から軽度のγ-GTP上昇も伴うようになり、持続するため精査したところ上腸間膜静脈から分岐し左総腸骨静脈に還流するCPSSを確認した。精査の過程で高アンモニア/高胆汁酸/高マンガン血症、肝限局性結節性過形成(FNH)、頭部MRIにおける両側淡蒼球のT1強調高信号合併も明らかになった。カテーテル検査においてCPSSのバルーン閉塞下での門脈圧は15mmHgと比較的低値で、血管造影で肝内門脈の発育も良好だったため経カテーテル的CPSS閉鎖を選択した。腸管へ還流する血管を避けつつ、骨盤レベルでvascular plugⅡ(20mm)によるCPSS閉鎖に成功した。治療終了後、短期間で血液検査データと頭部MRI所見は正常化し、FNHも術後半年の時点で縮小傾向を認めている。また、抑うつ症状や倦怠感も治療後から明らかに改善した。【考察】本症例は先天性心疾患に対し幼少期からフォローされていたが、腹部画像精査や血中アンモニア・胆汁酸測定は未施行だった。神経精神症状の一部はCPSSに起因する門脈体循環脳症が原因と考えられた。CPSSの15-20%に先天性心疾患を合併するという報告もあり、神経精神症状や肝機能障害を合併する先天性心疾患患者は血液検査や腹部画像検査によるCPSSのスクリーニングを考慮すべきである。