[I-PAL-01] COVID-19関連小児多系統炎症性症候群における心病変:国内レジストリより
キーワード:COVID-19関連小児多系統炎症性症候群, 川崎病, 心血管系異常
【背景】COVID-19関連小児多系統炎症性症候群 (MIS-C)は、COVID-19罹患2-6週間後に発症する全身性炎症性症候群である。川崎病類似の症状を呈するが、より重症度が高く、特に心血管系症状が多いと報告されている。しかし、国内での体系的な報告はこれまでにない。【方法】2022年8月にMIS-CおよびSARS-CoV-2 陽性川崎病(KD)のレジストリーを、4学会(日本小児循環器学会、日本小児科学会、日本川崎病学会、日本集中治療医学会)の協力を得て開始した。小児科入院設備のある約1700施設、集中治療医学会が認定する集中治療教育機関約380施設を対象とし、2019年1月1日以降に発症した症例を登録している。全例を中央診断判定委員会で検討し、診断根拠を明確化した。【結果】抄録提出時(2023年1月23日)、MIS-C 66例、KD 34例が登録され、そのうちデータ化されているMIS-C 32例 (男66%)、KD 25例 (男76%)を検討した。発症年齢 (中央値: 9.3歳 vs. 2.5歳)、入院日数 (13日 vs. 9日)、全例で基礎疾患なし。MIS-Cの88%が心血管系異常を呈した(胸痛:6%、ショック:13%、Troponin上昇:34%、BNP/NT-proBNP上昇:84%、心エコー異常:56%、心電図ST-T異常:19%, )。MIS-Cの30% (vs. KD 0%)は心収縮が低下 (LVEF < 55%) し、LVEF 中央値 59% vs. 71%であった。冠動脈異常 (経過中最大z score >= 2.5)は、MIS-C 9% vs. KD 8%に見られたが、退院時にはMIS-C 1例のみ冠動脈異常が残存した。ICU入室 (3 例 vs. 0例)、心血管作動薬使用 (3例 vs. 0例) 、呼吸管理 (2例 :酸素1例、HFNC 1例 vs. 0例)、ECMO症例なし。MIS-C・KDともに死亡例はなかった。【考察と結論】日本におけるMIS-Cも海外の報告と同様に心血管系異常を認める症例が多く、KDより重症例が多かったがその短期予後は良好であった。今後症例数を増やして解析を進める。変異株やワクチンの普及により症状や重症度が変化する可能性があり、長期に及ぶ症例登録が必要である。