[I-PAL-02] ファロー四徴症術後遠隔期における肺血流左右差と運動耐容能への影響 ―心臓MRIと心肺運動負荷試験を用いた検討―
キーワード:ファロー四徴症, 心臓MRI, 運動耐容能
【背景】ファロー四徴症(TOF)術後遠隔期にみられる肺血流の左右差は、換気血流不均等により運動耐容能に悪影響を与える可能性が、少人数の肺血流シンチによる検討で示されている(Sutton et.al. Am Heart J 2008)。肺動脈狭窄に対する治療適応を決定する上で重要な要素だが、心臓MRIを用いてこの仮説を検証した報告はない。【対象と方法】 2018年から2022年に当院で心臓MRIと心肺運動負荷試験(CPX)を同時に施行した7歳から18歳までのTOF術後患者を対象とした。Suttonらの論文を参考に「左肺動脈血流量-0.45×主肺動脈血流量」をLaterality Index (LI)と定義し、最高酸素摂取量(peak VO2)やVE/VCO2との関連性を検討した。【結果】MRI施行時年齢 14.8±2.3歳の33例(男13例)を対象とした。右室拡張末期容積105±24 mL/m2、肺動脈弁逆流率25.0±13.9%、LI -0.18±0.32 L/min/m2、最大心拍数 86±8 /分, peak VO2 28.0±5.7mL/kg/min (79±18%予測値)、VE/VCO2 30.1±2.8 (107±10%予測値)であった。LIとpeak VO2(%予測値)の間には正の相関傾向がみられ (R=0.298, p=0.088)、LI -0.43 L/min/m2 (25%tile)以下の患者では、それ以外の患者よりも有意にpeakVO2が低かった。(65.8±18.4 vs. 83.8±15.3 %予測値, p=0.031)。右室拡張末期容積や肺動脈弁逆流率とpeak VO2(%予測値)の間には相関はみられなかった(P=0.595, 0.244)。また、LIとVE/VO2(%予測値)の間には相関はみられなかった(p=0.628)。肺動脈弁逆流率, 最大心拍数, Laterality indexを用いた多変量解析では、LI が有意にpeak VO2 (%予測値)と相関していた(p=0.046)。【結語】TOF遠隔期の肺血流の左右差が運動耐容能の低下と関連している可能性が改めて示唆された。TOF術後にしばしば認める左肺動脈狭窄に運動耐容能低下を合併した症例では、カテーテル治療等を積極的に検討してもよいかもしれない。