[I-PAL-04] 乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対する外科治療の中期遠隔期成績
Keywords:乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 僧帽弁形成, 人工腱索
【背景】乳児特発性僧帽弁腱索断裂は発症後の重症化が速く、緊急で外科治療を要する症例が多い。ただ、稀な疾患であり外科治療成績の報告は少ない。今回、当院における外科治療の中期遠隔期成績を検討した。【方法】対象は2001年から2020年までに当院で経験した乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対して外科治療を施行した20例(手術時月齢中央値5.5ヶ月(interquartile range (IQR) 4.5-7.2), 体重7.1kg(IQR 5.9-8.0)男児8,女児12)。発症から手術までは中央値7.0日(IQR 2.8-17.5)。術前人工呼吸は14例(70%)、CPRは3例(15%)で要した。術前MRは全例severeで平均僧帽弁輪径は16.1±2.5mm(z- score 1.2±1.4)。来院後24時間以内の緊急手術を15例(75%)で要した。手術は右側左房切開でePTFE糸を用いた人工腱索再建と弁輪縫縮を行い、逆流制御が困難な症例は弁置換術(MVR)へとconversionした。中期遠隔期成績とその予後に影響を与える因子に関して検討した。【結果】観察期間は中央値12.9年(IQR 10.6-14.4)であった。腱索断裂部位は前尖が4例、後尖が8例、前後尖が8例。手術時に弁尖/乳頭筋に黄〜赤色/浮腫状の変性を12例(60%)で認めた。初回手術では13例(65%)で弁形成、7例(35%)でMVRを施行した。弁形成13例の手術終了時MRはmild以下であったが、うち3例はMR増悪を認め術後1ヶ月以内にMVRを要した。弁形成のみで退院した症例の遠隔期MRはmild以下8例、moderate2例であった。初回/術後早期弁置換術行った10例のうち3例で再弁置換術を平均10±1.3年で要した。単変量logistic回帰分析では初回/術後早期弁置換術に対する有意な関連因子は弁尖/乳頭筋変性であった(Odds ratio 21, 95% CI 1.8-251, P=0.015)。【まとめ】乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対する外科治療の中期遠隔期成績は良好であった。腱索断裂に加え、弁尖や乳頭筋への変性が及ぶ症例では初回/術後早期弁置換回避率が低かった。