[I-PD1-05] Fontan適応獲得に向けたCRTの有用性
Keywords:CRT, Fontan, Glenn
【背景】重症心不全の存在からFontan手術(F術)に進むことのできない単心室症例を経験する。心不全の原因として心室間/心室内同期不全の存在が挙げられる。【目的】心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)がF術の適応獲得に寄与するか検討する。【対象と方法】2015年1月以降、当施設でF術前、あるいはF術と同時にCRTを施行した単心室症例について、診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】全7症例。CRT施行時年齢は中央値1.5歳(1.2歳~8.3歳)、観察期間は中央値3.6年(1.3年~7.3年)。疾患の内訳は、Asplenia 3例、HLHS 2例、DORV/MA 2例でいずれも主心室が右室であった。もともとPMが留置されていた症例は3例であり、いずれも高度AVBに対する治療であったため、Vペース率はほぼ100%であった。全例エコーで同期不全を証明した。4例で電気生理学的検査にてCRTシミュレーションを行い、dP/dtを指標に効果判定・至適ペーシング位置を検討したが、残り3例は術前の血行動態が不安定であり、施行が困難であった。CRTのためのペーシングリード留置は全例開胸下に行い、可能な限りシミュレーションを参考に縫着部位を決定した。F術と同時に施行した症例は2例。いずれもGlenn手術施行から長期間(7.6年、5.4年)が経過し、肺動静脈瘻の形成などからF術を急ぐ状況であった。2例ともFontan循環は成立していたが、うち1例は肺動静脈瘻の残存による低酸素血症が遷延しCRT後7.3年で死亡した。F術前にCRTを施行した5例は、いずれもGlenn手術後心不全が遷延し循環維持が困難な症例であり、2例はGlennからのtake downを要するほどであった。CRT施行後は5例ともRVEDV、RVEF、CTRといった指標はいずれも改善し、肺静脈狭窄を背景とした肺高血圧を有す1例を除き、4例は体重増加を待ってF術施行予定である。【結語】同期不全による心不全を有する単心室症例において、CRTはF術適応獲得のための有効な治療となりえる。