[I-PPD2-03] 早産極低出生体重児の下心臓型総肺静脈還流異常に対するカテーテル治療先行例
キーワード:肺静脈閉塞, 人工心肺, ステント
【背景】総肺静脈還流異常(TAPVC)の根治的治療は外科手術である.肺静脈閉塞(PVO)を有する例では出生後早期の治療介入が求められる.一方,早産,低体重の程度に従い開心術は手技的に困難となるばかりでなく,頭蓋内出血等の全身合併症の危険がある.我々は,重篤なPVOを合併した早産極低出生体重児に対して,ステント留置・再拡張を先行し,待機的な開心術により合併症なく救命された1例を経験したので報告する.【症例】胎児期に下心臓型TAPVCを指摘され,在胎32週5日,品胎第2子として出生.出生体重1284g,Apgar Score 7/7点.出生当日に当院搬送入院.エコーでdescending veinが左門脈に還流し,その合流部から静脈管全体にかけて狭窄を認めた.椎体・右胸郭形成不全,右腎低形成を合併し,VATER連合が疑われた.著明な肺うっ血と肺高血圧を伴うが開心術困難と判断.日齢4,1109gで準緊急的にカテーテル治療の方針とした.右内頚静脈より6F Prelude Idealシースを留置し,6F BritetipガイディングカテをU字型に屈曲した狭窄部に進め,Express SD 5mm×19mm2個をタンデム留置した.エコー上のステント留置部位での血流加速が進んだ日齢29および日齢38にバルーンによる再拡張を施行した.肺高血圧は一旦改善したものの高肺血流が進み解消されなかった.日齢57(修正40週6日),1849gでsutureless法による心内修復術を施行した.術後8日目に抜管.エコー上肺高血圧,PVOなく,術後15日目に酸素投与を終了した.日齢103(修正47週3日),2505gで自宅退院となった.【考察・結語】早産児に対する人工心肺の適応限界に関する報告は多い.当院では修正35週以下で人工心肺手術を行なった7例中4例が死亡し,生存3例のうち2例で頭蓋内出血,低酸素性脳症に伴う乳児スパズムを発症した.本症例はこれまでの報告の中で最小の合併症ない救命例と考えられるが,更なる早産,低体重に対応する治療方針が今後の課題と思われる.