[I-PSY2-06] Fontan術後患者非心臓手術時の循環変化から見た血行動態の特徴
Keywords:Fontan術後症候群, Fontan循環, 非心臓手術
【目的】非心臓手術を受けるFontan術後患者は増加しつつある。普段は安定した血行動態でも侵襲時には血行動態が大きく変動する。そこで非心臓手術を受けたFontan術後患者の循環変化からその血行動態の特徴を考える。【結果】当院のFontan術後患者192人の内、非心臓手術は22例(21人)、内容は食道切除術、腸回転異常症根治術、虫垂切除術、鼠径ヘルニア根治術、肝切除術、帝王切開、卵巣摘出術、骨接合術、側弯症手術、漏斗胸手術であった(腹腔鏡5例、胸腔鏡1例)。【症例1】30歳男、C-TGA。7歳時に心外導管Fontan術へ到達。肝細胞癌のため腹腔鏡下肝部分切除の手術を実施。術前の中心静脈圧(CVP)13mmHg、体血流量(Qs)3.6L/min/m2。気腹圧12mmHgでCVP 19mmHgまで上昇したがPEEP 5→offとすることでCVP 15mmHgに低下し、手術終了時CVP 8mmHgまで低下した(手術時間3時間14分)。【症例2】11歳男、HLHS。3歳時に心外導管Fontan術へ到達。漏斗胸合併のためNuss手術を実施。術前のCVP 6mmHg、Qs 3.5L/min/m2。左右それぞれの肺動脈バルーン閉鎖試験でCVP 8mmHg(Qs変化なし)であった。Chest Way挿入にかなりの時間を要し、CVPは20mmHg(4時間後)→23mmHg(8時間後)と推移し混合性アシドーシスを生じた。術後NO投与を継続しCVP 8mmHgと速やかに低下した(手術時間12時間40分)。【症例3】5歳男、TAⅡa。3歳時に心外導管Fontan術へ到達。食道憩室のため胸腔鏡下手術を予定。術前CVP 8mmHg、Qs 3.6L/min/m2。症例1と同様に肺動脈閉鎖試験を行なった。右肺動脈閉鎖10分後、CVP 14mmHg。引き続き左肺動脈閉鎖10分でCVP 14mmHgのままであったがQs 1.7L/min/m2と低下した。長時間の片肺換気は高リスクと考えた。【考察】Fontan循環では静脈許容量低下のため気腹やPEEPで容易にCVPは変動する。また一見CVP上昇が許容範囲内でも侵襲が長時間に及ぶと予期せずQsが低下し急激に循環の破綻をきたす可能性がある。