[I-SY01-04] 左心低形成症候群における肺動脈狭窄の予防と治療
キーワード:左心低形成症候群, 肺動脈狭窄, retroaortic space
【背景】Norwood手術後の肺動脈狭窄の要因として狭小なretroaortic spaceと不均等な肺血流がある。これらを予防・治療するための当院の取り組みを報告する。【対象と方法】HLHSに対するswing-back(SB)法による大動脈再建4例、pulmonary artery septation(PAS)3例、および大動脈延長3例を対象とした。CTで肺動脈断面積/BSA(PA index:PAI)と、左肺動脈底部-大動脈弓間距離(arch height:AH)、左肺動脈レベルでの上行大動脈-下行大動脈間距離(arch depth:AD)を評価した。【結果】<swing-back法>3例はIAA合併やPDAステントなどの理由で通常の下行大動脈-大動脈弓吻合が困難と判断しSB法を施行した。手術時月齢4-10ヶ月、体重4.6-5.3kg。3例中2例は肺動脈狭窄なく経過したが(Fontan到達1例、BDG待機中1例)、1例はBDG後の左肺動脈狭窄に対しPASを要した。1例は直接吻合による大動脈再建後に左肺動脈狭窄を生じ、その治療のためSB法を施行した(14ヶ月、7.2kg )。術前後でAH:4.6→8.1mm、AD:18.6→22.7mm、左PAI:19→41と増大し、その後Fontanに到達した。<PAS>手術時期はBDGと同時1例、BDG後2例。手術時年齢3.2-3.9才、体重9.7-11.0kg。左PAIは術前後で36±2→71±20と増大した(p=0.09)。1例がFontanに到達、2例がFontan待機中である。<大動脈延長>手術時期はBDG前1例、Fontan後2例。手術時年齢2.3-7.8才、体重6.8-22.2kg。左肺動脈形成に併せて上行大動脈に人工血管(16-20mm)を間置して大動脈を延長した。術前後でAH:13.8±2.6→21.3±2.1mm(p<0.05)、AD:13.8±4.1→24.3±3.9mm(p<0.05)、左PAI:43±24→87±50(p=0.10)と増大した。【結語】Norwood手術後の肺動脈狭窄に対し、SB法や大動脈延長でretroaortic spaceを確保し、PASにより肺血流を増大させる戦略は有用と考えられた。