[I-SY01-05] 当院における左心低形成性症候群の中長期成績とRVPA shuntの肺動脈発育への影響の検討
キーワード:Hypoplastic left heart syndrome, Mid-to-long term outcome, Right ventricle-pulmonary artery shunt
背景:HLHSでのNorwood手術はRV-PA shunt (RVPAS)により生存率が改善されたが、肺動脈発育が促進されにくいという問題がある。このため当院ではBidirectional Glenn (BDG)時にRVPASをできるだけ残存しadditional flowを残してきた。BDGとFontan後の中長期成績を検討し、additional flowの肺動脈発育への影響について考察した。方法:当院でNorwood-RVPAS手術を施行後1995年1月から2015年12月にBDGを施行したHLHS患者92例の中長期成績を検討した。結果:BDGは生後6[5-8]カ月、体重5.0[4.3-5.4]kgで行った。RVPAS処理の記録が残存する76例のうち58例(63.0%)でRVPASを部分開存させ、18例で離断した。離断例でもRVPASと肺動脈の吻合部は残存させた。BDG術後の5年、10年、20年生存率は83.1%、79.4%、68.0%で、additional flowの有無により生存率に差は認めなかった。観察期間中に76例(82.6%)がFontan手術に到達した。Fontan前死亡10例、BDG takedown2例だった。次にFontan手術に到達した76例について検討した。Fontan手術後の10年、20年生存率は82.5%、72.8%であった。37例でBDG時にRVPAS吻合部での左肺動脈狭窄を認めたものの、肺動脈形成術は要しなかった。しかしBDG時での左肺動脈狭窄あり群はなし群に比較し、Fontan手術時の左肺動脈のPA indexが有意に低く (あり群: 79[50-99] vs. なし群: 99[84-146] mm2/m2, p=0.025)、肺血管抵抗が有意に高かった(あり群: 1.68[1.40-2.10] vs. なし群: 1.40[1.07-1.48] wood units, p=0.011)。また左肺動脈狭窄あり群のうち27例(73.0%)でadditional flowを残したが、Fontan手術時のPA indexへの改善効果は認めなかった結語:当院の検討では、HLHSでのBDG到達後の生存率は概ね満足いくものであった。当院では左肺動脈狭窄はadditional flowにより改善されないという結果であり、そのため現在は同様の症例にはBT shuntへの転換などadditional flow以外の方策をとっている。