[I-SY02-02] MAPCA症例に対する肺血管拡張療法の役割
キーワード:MAPCA, 肺血管拡張薬, 肺高血圧
【背景】肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損(PAVSD)やファロー四徴(TOF)では、中心肺動脈がないもしくは低形成のため主要体肺側副動脈(MAPCA)で肺血流をまかなう例がある。MAPCAの形態によって肺高血圧(PH)をきたす領域と狭窄によりPHのない領域が混在し第5群の複雑先天性心疾患に伴うPHに分類される。この群の治療目標は肺血流の適正化による低い右室圧とチアノーゼ改善であり、手術とカテーテル治療(CI)が治療の主体になっている。【目的】MAPCA症例における肺血管拡張療法の役割を考える。【方法】2010年から2023年2月までに当院で加療し心臓カテーテル検査により評価を行っているMAPCAをもつ二心室疾患症例の肺血管拡張療法について後方視的に検討する。【結果】107例のMAPCA例で当院でフォローしている患者は64例。年齢は1歳から37歳。主疾患はPAVSDが47例、TOFが11例、他6例。手術はラステリ術終了が48例。ユニフォーカライゼーション術後右室流出路形成術を施行、短絡を残してあるものが6例。CIも含めて未手術例はなかった。1肺区域以上で平均肺動脈圧が21mmHg以上認めたものが40例。そのうちの32例に肺血管拡張薬が導入。PDE5阻害薬1剤のみが20例、PDE5阻害薬とエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)など2剤併用が10例、PDE5阻害剤、ERA、セレキシパグの3剤併用例は2例だった。平均肺動脈圧が20mmHg以下に改善したものは48%(19例でうち6例は肺血管拡張薬無投与例)だった。【考察とまとめ】MAPCA例では手術やCIが肺循環是正の要であり肺血管拡張薬はサポートであった。肺血流が是正された後の長期的な使用で遠隔期の右室不全の軽減に寄与する可能性はあるかもしれないが、症例の積み重ねが必要である。