第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム2(I-SY02)
肺高血圧を伴う先天性心疾患への肺血管拡張療法

2023年7月6日(木) 13:30 〜 15:00 第4会場 (G303)

座長:高月 晋一(東邦大学医療センター大森病院小児科), 座長:石田 秀和(大阪大学大学院医学系研究科小児科学)

[I-SY02-03] 肺静脈病変合併例における肺高血圧治療戦略

宗内 淳, 杉谷 雄一郎, 清水 大輔, 田中 惇史, 峰松 伸弥, 峰松 優季, 古賀 大貴, 眞鍋 舜彦, 渡辺 まみ江 (JCHO九州病院 小児科)

キーワード:肺静脈狭窄, 肺血管拡張薬, 心臓カテーテル検査

【背景】肺静脈狭窄(PVO)に関連した肺高血圧(PH)は後毛細管性PHながら、病変は静脈壁細胞の筋線維芽細胞様変化に留まらず、肺動脈閉塞性病変へ波及し前毛細血管性PHを併発する(混合性PH)。狭窄解除が治療の主眼となるものの、肺血管リモデリング予防の観点から薬物治療の実効性・有効性は明らかではない。【方法】2000年以降経験したPVO46例(総肺静脈還流異常術後16例;心内奇形合併25例~無脾症9例含:先天性片側肺静脈閉鎖4例:肺静脈閉塞症1例)を後方視的に検討した。生存率(Kaplan-Meier法)算出後、群別比較し(log-rank検定)、得られた知見より治療法を概略する。【結果】PVO診断時齢7(2–24)か月、、両側21例;片側25例、平均肺動脈圧26(20–35)mmHg、患側経肺圧9(3–18)mmHg、肺血管抵抗係数2.31(0.98–3.67)Wood単位m2であった。34例で解除術(肺静脈ステント留置2例)を9(4–21)か月時に行い、9例に肺血管拡張薬(ER拮抗薬8例;PDE5阻害薬5例;PGI2受容体作動薬1例)を使用した。観察期間96(43–202)か月において1年生存率91%、5年生存率77%、10年生存率71%だった。片側例の予後良好(P=0.002)は当然ながら、心内奇形合併有無(P=0.84)や肺血管拡張薬使用(P=0.28)は予後に影響しなかった。単回PVO解除による治癒17例(50%)で、ステント治療2例は複数回追加治療(薬剤コーティングバルーン使用)を要した。【考察】(1)肺静脈狭窄解除できなかった症例は混合性PHへ進行するが、肺血管拡張薬は注意深い適応判断を要し、その効果は一時的にすぎない。(2)再発性PVOに対するステント治療はステント内再狭窄を招くが、薬剤コーティングバルーン治療は再狭窄発生遅延効果がある。(3)ER拮抗薬とPDE5阻害薬の使い分けを見定める知見は得られず、imatinib、bevacizumab、rapamycin等、静脈病変へ直接作用する薬剤のPVO治療薬としての可能性が期待されるものの、その効果は未だ不確定である。