[I-SY03-02] 学校心臓突然死ゼロを目指して ~小児心筋疾患診療医の立場から~
Keywords:学校突然死, 心筋症, 心臓検診
これまで、学校突然死をゼロにするための様々な関係各所の多大な努力の成果により、学校管理下での突然死は減少してきている。特に1994年に発出された「学校保健法施行規則の一部を改正する省令の施行及び今後の学校における健康診断の取扱いについて」通知により、小中高の第一学年にて心電図検診が行われるようになったこと、そして、2004年に一般市民によるAEDの使用が許可されたことで学校現場にもAEDが普及したことが、学校心臓突然死の予防については非常に有効であったと考えられる。日本スポーツ振興センターによる死亡給付対象例データからは、2021年度における学校心臓突然死は8例、新型コロナウイルス感染症の影響のなかった2019年度でも6例であった。しかし、死亡にまで至らずとも後遺障害を生じうるニアミス例は、その何倍もの数で発生しているであろうことは十分に推察される。学校(だけではなく家庭でも)心臓突然死を発症しうる小児心筋疾患は、肥大型心筋症を始めとした心筋症と、それに伴う致死的な心室性不整脈が最も多いと考えられる。これらの疾患は学校心臓検診にて抽出可能な場合もあるが、特に小学校高学年に発症するケースでは、小学1年時の心電図では異常を認めないケースもあり、心事故以前に診断にたどりつくことが困難な場合もある。今後の機械学習や人工知能の進歩により、人間には診断できないほど早期における、要注意症例の抽出が可能になることに期待したい。今回のシンポジウムでは、心臓突然死のニアミスから心筋症の診断に至った症例等を紹介し、参加者の先生方と学校突然死をゼロにするためのさらなる取り組みについて議論を深めたい。