第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム6(II-CSY06)
学校心臓検診のこれまでと今後:課題とデジタル化時代に向けた取り組み

2023年7月7日(金) 10:30 〜 12:00 第5会場 (G302)

座長:三谷 義英(三重大学大学院医学系研究科小児科学), 座長:牛ノ濱 大也(大濠こどもクリニック)

[II-CSY6-04] 学校心臓検診スクリーニングのAIモデル

西森 誠1,2, 加藤 愛章3, 津田 悦子3, 黒嵜 健一3 (1.神戸大学大学院 医学研究科 分子疫学分野, 2.国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部, 3.国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

キーワード:人工知能, 深層学習, 小児心臓検診

【背景】学校心臓検診において、心電図判読医の負担軽減のため、精度の高いスクリーニング方法が必要とされている。これまでの心電図判別モデルは波形をルールベースで判別しているものが主流であった。近年、深層学習の発展により12誘導心電図の判別モデルが台頭してきたが、検診のような陽性割合が極端に低い場合においては、ラベルの不均衡により通常のモデルでは精度の向上が困難という問題点が存在していた。【方法と結果】本研究の目的は、上記問題の解決策として深層学習による異常検知モデルを用いた小児心電図診断スクリーニングシステムを構築することである。吹田市内の小中学校で学校心臓検診を受診し、心電図スクリーニングを受けた64,146名の小児を対象とした。MFER形式の心電図データに対してConvolutional Neural NetworkおよびVariational Autoencoderモデルをベースとした異常検知AIモデルを作成した。本研究では、一次検診で小児循環器医により「異常なし」と判別された例を正常例、それ以外は異常例とした。学習データとして正常例60,054例のうち75%の45,040例を学習した上で、正常例の15,014例と異常例4,092例の2分類で予測精度を検討した。AUC-ROC=0.996、感度 0.98、陽性適中率 0.916という結果となり、高精度なモデルを作成することができた。今後さらなる発展として、スクリーニング後の各疾患の判別モデルの作成を検討しており、短時間で質の高いスクリーニングで判読医の負担を軽減することができる可能性がある。