[II-CSY6-05] 小児生活習慣病予防健診の必要性と今後の展望
キーワード:小児生活習慣病予防健診, 小児肥満症, 家族性高コレステロール血症
本年は、法律に基づく学校心臓検診が義務付けられてから50年目にあたる。学校心臓検診によって抽出される主な疾患は、リウマチ性心疾患から、先天性心疾患、川崎病、不整脈と変遷を遂げてきた。我が国では、国民の健康寿命の延伸を目的として、令和2年に循環器病対策推進基本計画が公表され、その中には小児期からの対策が明記されていることから、小児心臓検診の対象疾患としての小児生活習慣病が注目されている。 我が国では、1987年から全国28都府県で小児成人病検診が開始され、小児生活習慣病予防健診(以降 予防健診と略)と名称を変えて、全国各地で実施されている。しかし、現時点では法定健診ではないため、実施率が低く、健診方法や健診項目、陽性者抽出基準は統一されていない(宮崎ら 日症医会誌No.62, 2021)。血管超音波検査を行うと肥満小児には既に早期動脈硬化が認められ(原ら 肥満研究 12, 2006)、メタボリックシンドローム(MetS)では、小児期から全身の慢性炎症も認められている(原ら 日老雑47, 2010)。小児肥満症やMetSを放置すれば、将来の心血管病が高率に発症することが予測される。更に、小児期から動脈硬化を促進させる家族性高コレステロール血症のスクリーニングも未だ不十分である。 そこで演者は、腹部肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝のスクリーニングを視野に入れた包括的な小児生活習慣病予防健診システムを開発し、2019年に杉並区に導入した(原 東京都予防医学協会年報2021)。将来の心血管病発症を予防するためには、小児心臓検診と小児生活習慣病予防健診の統合及び、健診データのデジタル化と活用が重要である。手始めに腹囲測定を導入するだけでも大きな効果を及ぼすことが期待できる。このことは、健康教育や児童生徒のヘルスリテラシー向上にも有益と思われる。