[II-CSY7-04] 水滴から波紋へ:医療現場から子どもの権利擁護を考える
Keywords:チャイルド・ライフ・スペシャリスト, 権利擁護, 医療における子どもの福祉
チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)は、医療と子どもを繋ぐ橋渡しをします。発達段階における特徴やお子さんそれぞれの個性を踏まえ、“遊び”をツールとして活用して医療の中で子どもや家族が感じる心的負担を軽減します。北米で行われていたCLSの活動が日本でも提供されるようになり、CLSといえば“(治癒的)遊び”、“プレパレーション”などと活動のイメージを持っていただけることも増えたように感じています。CLSが行う医療と子どもを繋ぐ橋渡しの役割には、権利擁護も含まれます。遊び等を通して子どもに気軽に接する機会も多いCLSは、子どもや家族にとっては医療者との中立の立場であると捉えられることが多いため子どもと家族のストレートな想いを受け止める機会が多くあります。その想いの根底には権利の課題が含まれていることが実は多くあり、彼らの代弁者となることでCLSは彼らの権利擁護を行っています。臨床での経験を重ねるうち、権利擁護は水滴の波紋のようであると思うに至りました。ベッドサイドで受け止めた子どもや家族からの訴えや想いという小さな水滴をチーム、組織、社会へと権利擁護という大きな波紋に繋げることが重要であると感じています。CLSに関する初めての専門書籍の中でThomson, R.H&Stanford, G(1981)は、子どもの利益につながる変化は、子どもの幸せに深く関係する人々が変化する必要のある部分に気づき、変化の実現に向けて積極的に支援することで成し遂げられると述べています。私たち小児医療関係者は、子どもの幸せに深く関係している当事者です。小児医療における権利擁護の波紋を大きくするために、私たち小児医療関係者も変化に向けて積極的な働きかけをしていく必要があります。子どもの幸せに深く関係する皆さんと共に医療の中の子どもと家族の幸せのための子どもの権利と権利擁護の視点を深めたいと思います。