[II-EL-1]
キーワード:iPS細胞, 再生医療, 創薬研究
これまで私は、神経発生の基礎研究を基盤に、元来再生能力が無いと言われてきた中枢神経系の再生に挑戦し続けてきました。最近では、損傷後の比較的早期にあたる亜急性期を対象としたiPS細胞由来神経幹細胞移植については、2021年6月末に開始し、1例目の手術を同年12月に行いました。現在、さまざまな試行錯誤のもと、慢性期の脊髄損傷に対するさらなる治療効果増大を目指し研究を行なっており、慢性期のラット脊髄損傷モデルでは非臨床での検討を行い、医師主導治験を含む臨床への応用に着実に前進しています。また、iPS細胞技術を用いて、ALSを始めとする神経難病の病態解明と創薬研究を進めています。既存の薬剤ライブラリーを用いて、比較的安全性の高い治療薬候補であるロピニロール塩酸塩(D2Rアゴニストで抗PD薬として既に承認されている)を同定しました。次に、これらの結果に基づき、ロピニロール塩酸塩(ROPI)の安全性と有効性を無作為化比較試験(医師主導治験(第I/IIa相医師主導治験・ROPALS試験:UMIN000034954)により評価しました。有効性については、1年間の全投与期間において、ロピニロール塩酸塩がALS患者の全般機能(ALS FRS-R)および活動量の低下を有意に抑制しました。また、1年間の全投与期間において、ロピニロール塩酸塩がALS患者の病態進行を有意に抑制し、呼吸不全に至るまでの期間を有意に延長することが明らかになりました。次のステップとして、同薬剤が抗ALS薬として承認される様に第III相試験の準備をしています。