[II-OR15-03] 成長に伴う脱血管の偏位とLVAD離脱の適応評価に関する検討
Keywords:重症心不全, 補助循環, 集中治療
【はじめに】本邦において小児心臓移植待機期間は数年に渡り長く、心不全管理として左室補助循環装置(LVAD)を要する患者も少なくない。同時に移植待機中に、心機能が回復しLVAD離脱を行う事のできる症例も経験する。今回、成長に伴い脱血管の偏位が生じLVAD離脱を行ったが、予想以上の心機能回復およびADL回復を示した症例に関し検討を行う。【症例】2歳女児、身長84.5cm、体重9.8kg。生後2ヶ月時に発症した左室緻密化障害・拡張型心筋症に対し生後4ヶ月時(56cm、4.6kg)にBerlin Heart EXCOR®︎を装着。以降、循環は安定しBNP 150pg/mLで推移。つかまり立ち可能な程度の発達で発育も得られた。EXCOR装着後2年で20cm近く身長が伸びており、エコーで臓器偏位が示唆され造影CT検査を実施したところ送脱血管が心臓を下方に牽引する様が確認された。加えて脱血不良アラームが頻発する事が増えた為に離脱可能かの評価検査を実施し、2歳半でLVAD離脱。離脱後4ヶ月が経過するがDOB 3γ・Mil 0.4γ投与下に循環は安定し、独歩や発語などの発達も見られる様になっている。【考察】当院の10kg未満のEXCOR離脱症例の検討ではVAD装着時の心筋の間質線維化が乏しいとLVAD離脱し易いと示されていた。本症例は間質線維化が乏しいもののNCLVを併発しており、加えてLVAD離脱前には左房拡大も強く内科的管理の難渋が予想されLVAD再装着も視野に入れていた。LVAD離脱により、長軸方向の牽引が解除される事による壁運動の改善が主に寄与していると考えられる。成長に伴い送脱血管の偏位が生じ種々のリスクが懸念される場合は、負荷試験でborder lineの症例であっても一旦は離脱を試みても良いかもしれない。