[II-OR16-02] 動脈管開存症(PDA)コイル閉鎖術後、成長とともに留置コイルの断裂を認めた一例
キーワード:動脈管開存症, コイル閉鎖術, 遠隔期合併症
動脈管開存症(PDA)に対するコイル閉鎖術は小児の心臓カテーテル治療の比較的初期から開始され、治療手技として確立している。現在では新生児に対してPiccolo Occluderなどの新しい閉鎖栓も使用されるようになり、治療範囲も広がってきているが、その経過観察方法や期間などは施設間で異なっている。今回、コイル閉鎖術後、約15年の経過中に成長とともにコイルの変形、延長とともに断裂を疑う症例を経験した。 症例は16歳の男性、生後8か月時に約1mmのPDAに対し、コイル閉鎖術を施行した。その際、カテーテルを先行させる際に、中膜平滑筋を損傷したため、コイルを留置せずにカテーテルを抜去すると動脈管壁から解離を合併する可能性もあり、3mm3巻きFlipper PDAコイルを留置して、完全閉鎖を確認した。コイル留置後も大きな合併症を認めることなく退院となった。1年後のカテーテル検査でもPDAの完全閉鎖と留置したコイルの変形などは認めず、そのまま外来での定期経過観察となった。 治療後10年を過ぎた頃より、胸部レントゲン写真でコイルのループ形が成長とともに延長し、12年目には2ループ分が伸びきったような形状となり、治療後15年目では本人は無症状で運動などでの症状の出現はないものの、レントゲンではコイルは頭側方向にさらに引っ張られた様な形状となり、断裂しているように見えたため確認のため造影CTを施行した。CTではコイルの断裂の可能性を指摘されたが、コイル断端の大動脈内腔、肺動脈内腔への突出を認めず、現在も外来で経過観察中である。 PDAに留置したコイルが留置後遠隔期に体内で断裂またはアンラベル化した症例は確認したかぎりでは報告がなく、そのメカニズムも不明である。他にも同様の症例が存在する可能性もあり、留置前後に何らかの所見や問題があった症例に対しては長期の経過観察が必要であると考えた。