[II-OR16-06] 体肺側副血管塞栓術後の発熱のリスク因子やステロイドの治療効果
キーワード:体肺側副血管, 塞栓術, グレン術
【背景】心不全の軽減や、TCPC術後のICU滞在期間等短縮のため体肺側副血管(SPC)塞栓術を行うことがある。塞栓術後の発熱例を少なからず経験するが、その機序や対処法は明らかでない。当科では早期の解熱を目的に発熱例の一部に対してステロイド投与を行ってきた。【目的】SPC塞栓術後の発熱の発生率、リスク因子、および、ステロイドの効果を検討する。【方法】対象は2013~2022年にSPCに対する塞栓術を施行したグレン術後の46例。男女比24:22、年齢0.5~6.8(中央値1.9)、体重4.0~14.9(9.4)kg。①発熱群:29例(63%)と非発熱群:17例に分類し、BSA、SpO2、NT-proBNP、PA index、平均肺動脈圧、心房圧、経肺圧較差、使用コイル/デバイスの種類及び個数、治療翌日のLDH、CK、CRPを比較した。②発熱群については抗生剤投与の有無、血液培養の結果及び、発熱期間と血液検査データ、ステロイド投与との関連を調査した。【結果】発熱群では有意に経肺圧較差が大きく、コイル/デバイスの全使用個数、および、Interlock使用個数が多く、治療翌日のCRPが高値だった。CRP高値だったが、BSA、SPO2、NT-proBNP、PA index、平均肺動脈圧、心房圧、LDH、CKには差がなかった。②発熱群において抗生剤は全例で投与しており、血液培養施行25例に陽性例なし。発熱期間(中央値3日)はCRPと正の相関(r=0.50)を認めたが、ステロイドの有無で差は見られなかった。【考察】異物留置後ではIE発生に注意を要するが、IEを示唆する発熱はSPC塞栓後では多いと考えられる。しかし今回の結果では血液培養陽性はなく、その可能性は極めて低い。加えてLDH、CKは2群間で差はなく塞栓による組織損傷の可能性も低いと考えられた。一方でコイル個数、繊維を持つInterlock、炎症を示唆するCRPの有意差からは異物に対する反応が疑われる。ステロイドは炎症の抑制に働く一方で、血栓形成を促進することで結果的に発熱を助長した可能性も否定できない。