[II-OR19-04] 患者iPS細胞を用いた拘束型心筋症における心臓線維芽細胞と心筋細胞間相互作用の解明
Keywords:拘束型心筋症, iPS細胞, 線維芽細胞
【背景】拘束型心筋症(RCM)では病原遺伝子が複数報告されているが、約半数の症例では遺伝子変異が見つからず、同じ遺伝子変異でも異なる臨床像を呈するなど、RCMの病態は心筋細胞の遺伝子変異だけでは説明がつかない。これまで我々は、心臓の重要な構成細胞である心臓線維芽細胞(Cardiac fibroblast: CF)に着目し、RCM患者由来CFは遺伝子発現パターンが健常CFと大きく異なっており、RCM-CFと健常心筋細胞(CM)を共培養すると、健常CMの拡張能が低下することを報告した。今回、患者iPS細胞とゲノム編集技術を用い、RCMにおけるCFとCMの病態解析を行った。【方法】ヘテロ接合のTNNI3変異をもつ小児RCM患者の単核球よりiPS細胞株を樹立した。これにCRISPR/Cas9 を用い、変異を修復したisogenic correction株 (Iso)と、変異をhomozygousに導入した株(Homo)を確立した。健常人由来iPS細胞株も対照として用いた。それぞれのiPS細胞をCMに分化させ、収縮・拡張能、サルコメア構造、遺伝子発現を検討した。また、iPS由来CMと健常CFを共培養し、CMがCFに与える影響を解析した。【結果】Motion analyzer解析においてRCM-CMとHomo-CMでは、健常CM、Iso-CMと比較し拡張能が有意に低下しており、Iso-CMの拡張能は健常CMと同等であった。細胞内Ca2+動態に差はなかった。免疫染色ではトロポニンIの細胞内局在に有意な差はなく、電子顕微鏡ではmyofibrilやミトコンドリア形態に明らかな差は見られなかった。RNA-seq解析ではRCM-CMの発現パターンは著明に変容していた。またCFとの共培養では、RCM-CMおよびHomo-CMと共培養したCFの遺伝子発現パターンは、Iso-CMや健常CMと共培養したCFに比べて大きく変化していた。【結語】TNNI3変異を有する患者iPS細胞由来のCMでは拡張能低下が見られた。さらに共培養したCFの遺伝子発現にも影響を与えることが示唆された。