[II-OR20-03] 冠動脈狭窄に対する乳児期手術介入例の検討
Keywords:冠動脈狭窄, 乳児, 外科治療
【目的】乳児期の冠動脈狭窄に対する手術介入の報告は少なく,とくに中期的手術成績は不明で乳児の細い冠動脈への手術適応を判断するのに苦慮することがある.当院での過去10年間の手術介入例につき手術成績を調べ,手術介入の妥当性につき検討した.【方法】冠動脈関連手術のうち,BWG症候群,動脈スイッチ手術の冠動脈移植,冠動脈瘻に対する手術など,狭窄病変でない手術は除外した.冠動脈狭窄または閉塞に対し手術介入した2012年以後の31例中,1歳未満での介入16例を対象とし,狭窄形態,術式,手術成績,遠隔予後につき検討した.【結果】手術時日齢は,median (IQR)で55 (25-117)日,体重は3.8 (2.7-5.4) kgだった.いずれも先天性心疾患を合併し,総動脈幹症5例,PA-VSD 4例,機能的単心室 3例,大動脈弁上狭窄 2例,AVSD 1例,VSD 1例だった.冠動脈狭窄の形態(重複あり)は,入口部狭窄10例,壁内走行8例,大血管間走行4例,医原性閉塞1例で,左冠動脈9例,右冠動脈5例,単冠動脈2例だった.初回手術時冠動脈介入は8例で,2回目の手術での介入7例,3回目が1例だった.既往手術は,PAB 3例,SP shunt 3例,Rastelli, RVOTR, Norwoodが各1例だった.冠動脈狭窄解除術式(重複あり)は,入口部切開&内膜固定が13例,unroofing 8例,patch拡大 2例だった.急性期死亡はなく,遠隔死亡は2例あったが,非心臓関連死(術後3ヵ月で消化管穿孔,術後5年で喀血)だった.術後の冠動脈閉塞が1例あり,PA-VSDで初回SP shunt術時に右冠動脈肺動脈起始合併に気づかれず大血管周囲剥離時の止血操作で結紮されており,術後2ヵ月の大動脈造影で右冠動脈閉塞が判明し,生後6ヵ月時に萎縮した右冠動脈を入口部からパッチ拡大したが術後4ヵ月の造影で閉塞していた.【結語】乳児期の冠動脈狭窄病変の手術介入成績はおおむね満足いくものであり,術後の冠動脈関連の有害事象を回避するためにも積極的に介入すべきと考えられた.