第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

HLHSとその類似疾患

一般口演(II-OR21)
HLHSとその類似疾患

2023年7月7日(金) 09:50 〜 10:50 第7会場 (G314+315)

座長:大嶋 義博(兵庫県立こども病院 心臓血管外科), 座長:帯刀 英樹(宮城県立こども病院 心臓血管外科)

[II-OR21-01] Norwood型手術後肺動脈狭窄に対するTCPC時の大動脈弓延長、肺動脈形成における下行大動脈balloon送血の有用性の検討

日隈 智憲, 白木 宏長, 元野 壮, 松島 峻介, 大嶋 義博, 松久 弘典 (兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:Norwood, TCPC, 補助循環

【背景】本邦のNorwood型手術はarch再建の特性から、低い大動脈弓や肺動脈狭窄を来すものが散見され、GlennもしくはFontan時に介入を要するケースがある。当院では、後に介入しづらいaortopulmonary spaceに12mmの人工血管もしくは同等の中心肺動脈をパッチ形成し、成人期までの径を担保することを基本概念とし、Fontan時に大動脈弓延長(AAE)と肺動脈形成(PAP)を同時施行する方針としている。2018年以降、当院倫理委員会の承認を得て、腕頭動脈送血とハイフローSPスタッドカテーテル®(富士システムズ)を用いた下行大動脈balloon送血併用で上記手術を行っている。【目的】下行大動脈balloon送血併用の有用性および安全性について、後方視的に検討する。【結果】Balloon送血群(B群)5例と腕頭動脈送血のみで、近位弓部大動脈遮断を行い、上行大動脈を離断、PAPを行った対照群(C群)7例を比較した。以降、B群 vs C群で表記する。手術時月齢は中央値で33.4 vs 33.1。手術、人工心肺、大動脈遮断の各時間(分)は、それぞれ平均556 vs 579、280 vs 282、162 vs 166と有意差なし。最低体温は両群平均28℃。balloon送血時間は平均147分。両群とも対麻痺等の神経学的障害はなかった。術前の血清クレアチニン(Cr)のベースライン(mg/dL)は0.32 vs 0.28で差はない(p=0.33)が、術後48時間以内のCr peak値との差が0.16 vs 0.27とC群で有意に大きく(p=0.011)、AKIN診断基準stage 2のCrのベースラインの2倍以上を満たす症例がB群0、C群3例、尿量0.5mL/kg/時未満が12時間以上持続を満たす症例がB群0、C群1例であった。【結語】腕頭動脈送血・下行大動脈balloon送血併用のAAEとPAPは、AAE時には、良好な視野で十分な縫い代を確保でき、術野展開も容易で操作性にも優れていた。また、下行大動脈の大部分を遮断せざるを得ない形態の症例に対しても、確実な下半身への血流量を担保でき、脊髄・腎保護の観点からも有用な方法であった。