[II-OR21-03] Norwood手術における弁付き心室肺動脈導管の治療成績と有用性
キーワード:Norwood手術, 右室肺動脈導管, 左心低形成症候群
【背景】左心低形成症候群(HLHS)に対する右室肺動脈導管を用いたNorwood手術(NW術)はBT shuntと比較し術後血行動態の安定性により生存率、移植回避率において有利とされるが、心室切開による心機能低下や肺血管床発育不良の報告がある。当院での弁付き心室肺動脈導管(SV-PA shunt)法によるNW術の成績をBT shunt法と比較検討した。【方法と対象】2003年7月〜2022年2月にNW術を行なった連続38例を対象。診断はHLHS 17例、HLHS類縁疾患21例。NW術時に肺血流路としてePTFE弁付き導管によるSV-PA shuntを用いたV群は21例、BT shuntを用いたB群は17例。日齢(V群70±40 vs B群65±36日, p=0.32)、体重(V群3.9±0.9 vs B群3.8±0.8kg, p=0.25)、先行する両側肺動脈絞扼術(V群67 vs B群88%, p=0.12)、NW術前の中等度以上の房室弁逆流(V群24 vs B群41%, p=0.25)は両群間で有意差なし。graft径はV群5mm 10例、6mm 3例、8mm 8例、B群3mm 2例、3.5mm 7例、4mm 7例、5mm 1例。NW術成績とグレン術前の検査データを比較した。【結果】観察期間中央値52ヶ月(3日-215ヶ月)でV群はTCPC到達12例、グレン待機6例、死亡3例。B群はTCPC到達10例、TCPC待機1例、死亡5例。Kaplan-Meier法による5年生存率はV群84.8%、B群70.6%(log-rank test p=0.32)。ECMO使用(V群4 vs B群2例, p=0.54)、心肺蘇生イベント(V群3 vs B群2例, p=0.63)に有意差は認めず。グレン前カテーテル検査で心室拡張末期圧(V群 9.0±3.5 vs B群8.9±3.2 mmHg, p=0.46)、拡張末期容積(V群97±32 vs B群107±31ml/m2, p=0.21)に有意差なく、駆出率はV群で有意に高かった(V群61±8 vs B群54±9%, p=0.04)。PA indexは両群で同等であった(V群220±80 vs B群222±59mm2/m2, p=0.46)。【結語】弁付き導管を用いたSV-PA shuntは心室切開による心室機能低下は認めず、BT shuntに劣らない良好な肺血管床の発育が得られた。