[II-OR23-07] 高肺血管抵抗のFontan術後患者に対する肺血管拡張薬使用の検討
キーワード:Fontan手術, 高肺血管抵抗, 肺血管拡張薬
【背景】Fontan循環における慢性的な非拍動性肺灌流は肺血管内皮機能障害を引き起こす可能性があり、肺血管抵抗上昇と低心拍出とが相まってFontan failureを発症するリスクが高くなると考えられている。我が国のFontan術後患者における肺血管拡張薬使用の現状についての報告は少ない。【目的】Fontan術後患者の高肺血管抵抗症例に対する肺血管拡張薬使用の現状とその効果を検討した。【方法】先天性心疾患を伴う肺高血圧症例の多施設症例登録研究 (JACPHR)に登録されたTrans-pulmonary pressure gradient (TPG)>6mmHg、または肺血管抵抗係数(PVRI)≧3 Wood unit・m2を満たす高肺血管抵抗状態のFontan術後患者における、診断及び登録時のデータ解析を行なった。【結果】24例の高肺血管抵抗を伴うFontan術後患者が登録された。診断時年齢は中央値3歳 (interquartile range; IQR: 2-11)、男児が14例(58%)であった。診断の内訳は、左室型単心室15例 (PAIVS 6例、TA 3例、DORV 2例、その他4例)、右室型単心室 9例(DIRV 4例、DORV 3例、その他2例)であった。診断時TPGの中央値は7mmHg (7-9)、PVRIの中央値3.2 Wood unit・m2 (2.5-3.8)であった。24例中14例(58%)で肺血管拡張薬が使用されていた(3剤併用3例、2剤併用6例、単剤5例)。治療経過判定ができたのは8例で、TPGは診断時中央値7 (7-9.5) vs治療後中央値4.5 (4-6.5) (p<0.036)、PVRIは診断時中央値3.5 (3.1-4.0) vs治療後中央値1.75 (1.27-2.82)(p<0.0055)と有意に改善を認めた。薬剤投与群と非投与群では、診断時TPGでは有意差を認めなかったが (8 (7-9)vs7 (7-7.3) p=0.2)、PVRIは投与群で有意に高値であった(3.7 (2.6-4.0)vs2.7 (2.0-3.2) p<0.034)。【結語】高肺血管抵抗を伴うFontan術後患者に対する肺血管拡張薬の投与は肺循環を改善させる可能性がある。今後、多くの症例が集積すれば、さらに詳細な解析が行われることが期待できる。