第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

フォンタン手術後遠隔期

一般口演(II-OR23)
フォンタン手術後遠隔期

2023年7月7日(金) 15:50 〜 16:50 第7会場 (G314+315)

座長:葭葉 茂樹(埼玉医科大学国際医療センター), 座長:安田 和志(あいち小児保健医療総合センター 小児心臓病センター循環器科)

[II-OR23-07] 高肺血管抵抗のFontan術後患者に対する肺血管拡張薬使用の検討

石井 良1, 石田 秀和1, 石井 卓2, 内田 敬子3, 高月 晋一4, 細川 奨2, 稲井 慶5, 福島 裕之6, 小垣 滋豊7, 山岸 敬之8, 土井 庄三郎9 (1.大阪大学 大学院医学系研究科 小児科, 2.東京医科歯科大学 小児科, 3.慶應義塾大学 保健管理センター, 4.東邦大学医療センター大森病院 小児科, 5.東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科, 6.東京歯科大学市川総合病院 小児科, 7.大阪急性期総合医療センター 小児科・新生児科, 8.慶應義塾大学医学部 小児科, 9.国立病院機構災害医療センター 小児科)

キーワード:Fontan手術, 高肺血管抵抗, 肺血管拡張薬

【背景】Fontan循環における慢性的な非拍動性肺灌流は肺血管内皮機能障害を引き起こす可能性があり、肺血管抵抗上昇と低心拍出とが相まってFontan failureを発症するリスクが高くなると考えられている。我が国のFontan術後患者における肺血管拡張薬使用の現状についての報告は少ない。【目的】Fontan術後患者の高肺血管抵抗症例に対する肺血管拡張薬使用の現状とその効果を検討した。【方法】先天性心疾患を伴う肺高血圧症例の多施設症例登録研究 (JACPHR)に登録されたTrans-pulmonary pressure gradient (TPG)>6mmHg、または肺血管抵抗係数(PVRI)≧3 Wood unit・m2を満たす高肺血管抵抗状態のFontan術後患者における、診断及び登録時のデータ解析を行なった。【結果】24例の高肺血管抵抗を伴うFontan術後患者が登録された。診断時年齢は中央値3歳 (interquartile range; IQR: 2-11)、男児が14例(58%)であった。診断の内訳は、左室型単心室15例 (PAIVS 6例、TA 3例、DORV 2例、その他4例)、右室型単心室 9例(DIRV 4例、DORV 3例、その他2例)であった。診断時TPGの中央値は7mmHg (7-9)、PVRIの中央値3.2 Wood unit・m2 (2.5-3.8)であった。24例中14例(58%)で肺血管拡張薬が使用されていた(3剤併用3例、2剤併用6例、単剤5例)。治療経過判定ができたのは8例で、TPGは診断時中央値7 (7-9.5) vs治療後中央値4.5 (4-6.5) (p<0.036)、PVRIは診断時中央値3.5 (3.1-4.0) vs治療後中央値1.75 (1.27-2.82)(p<0.0055)と有意に改善を認めた。薬剤投与群と非投与群では、診断時TPGでは有意差を認めなかったが (8 (7-9)vs7 (7-7.3) p=0.2)、PVRIは投与群で有意に高値であった(3.7 (2.6-4.0)vs2.7 (2.0-3.2) p<0.034)。【結語】高肺血管抵抗を伴うFontan術後患者に対する肺血管拡張薬の投与は肺循環を改善させる可能性がある。今後、多くの症例が集積すれば、さらに詳細な解析が行われることが期待できる。