[II-OR24-05] TAPVC primary sutureless repair術後遠隔期PVO症例からみる遠隔期pitfall
Keywords:primary sutureless repair, PVO, TPAVC
<背景>Sutureless repair (SR) はPV周辺に吻合部を作らず, PVO予防となると言われており, primary SR (pSR) も普及しつつあるが, その弱点について述べた文献はない。当院におけるpSR術後遠隔成績について考察した。<方法>2013年〜2021年に当院で施行したTAPVC(非他心疾患合併例)pSRについて後方視的に検討し, 特に術後遠隔期PVOについて考察した。<結果>TAPVC修復術15/44件(34%)がSR, うちpSRは9/15件。PVびまん性狭窄/PV低形成例はpSR3/4件。pSR生存例で術後PVO発生は1例で(TAPVCIII型, 手術時日齢8, 体重2.9kg), 術後4年目に全LPVが閉塞。無症状で, エコーでPV流入波形の加速はなく, カテーテル検査でMPA/FA24/95mmHg, LPA/FA22/97mmHgとPHもなく, 造影では無数のdrainage veinを介してLPVが複数箇所へ灌流。造影CTやMRIでは痕跡的なLPVが下行大動脈と左心房に圧迫されていた。漏斗胸は目立たなかった。secondary SR術後PVO例は2件(術後105日, 術後11か月)で, ともに術中に初回修復術の吻合部で内膜肥厚がみられた。術後105日目PVO例は多呼吸症状があり, エコーで心室中隔の平坦化やPV流入波形の悪化が見られた。術後11ヶ月目PVO例は無症状で, カテーテル検査でもPHは認めなかったが, エコーでPV流入部の加速を認めた。<考察>術後4年目PVO例は物理的な圧迫が原因と推測され, 他2例のsecondary SR術後PVOのような, 一般的に言われている吻合部の組織増生による機序とは異なると考える。圧迫の理由としては, PV周囲の心膜がSRで利用されたことにより支持組織の支持力が変化し, drainage veinが十分発達する程ごく緩徐に, 心臓と下行大動脈の位置が変化したためと推測し, よってPHを来さず発見も困難であった。<結論>pSRの術後成績は良好だが,遠隔期でPHを伴わずに緩徐にPVOが進行するpitfall例もあり,各PVの灌流を確実に確認する事が重要で,当院では必ず術後半年にCTで画像評価を行う方針へ転換した。