[II-P05-2-01] 心室中隔欠損に伴う僧帽弁閉鎖不全のVSD閉鎖術後の自然経過
Keywords:VSD, MR, 自然予後
【はじめに】心室中隔欠損VSDでは、左心系の容量負荷と伴にしばしば僧帽弁閉鎖不全MRを生じるが、VSD閉鎖術時のM弁への治療介入については議論のあるところである。【目的】術前にmild~moderate のMRのあったVSD症例について、VSD閉鎖のみを行った後のMRの推移と臨床経過について調査する。【対象と方法】2010年~2022年に、当院で単独のVSDに対する閉鎖術(姑息術先行なし)が行われた334例のうち、mild~moderateのMRを術前に診断された27例(8.1%)について、診療録より後方視的に調査した。【結果】男児13例、女児14例。手術時年齢7.6か月(中央値・以下同)、体重6.2kg。VSDはperimembranous 16例、muscular 4例、doubly committed 7例。MRはmild 26例、moderate 1例。術前LVDd =143% of Normal、MVsize =+2.8Zと拡大していた。術前RVP/LVP=0.65、PAP (m)=28mmHg、Qp/Qs=2.9、Rp=1.4。VSD閉鎖術のみを行い、13例で退院時の術後早期(1~2週間)にMRの改善を認め、この時点で改善を認めなかった14例よりも術後早期のLVDd、MVsizeの縮小率が大きかった。後者14例のうち10例は遠隔期にMRの改善を認め、改善を認めなかった4例と比較して、術後早期のLVDd、MVsizeの縮小率が大きかった。遠隔期の心エコーフォロー期間は24例で3.6年、残存MRはnone 4例、trivial 16例、mild 4例であった。mild MRが残存した4例と改善を認めた20例との比較では、調査した術前因子に差はなかった。全27例の外来フォロー期間は7.2年で、直近の1例を除き全例無投薬で運動制限はなく、NYHAI度であった。【まとめ】VSDに伴うmild~moderate のMRは、VSD閉鎖術後83%でtrivial以下に改善し、17%でmild MRが残存した。術前にMRの予後を予測するのは難しいが、術前拡大したLVDd、MVsizeのVSD閉鎖術後早期の縮小率が遠隔期に残存するMRと関連すると考えられた。残存MRについて、少なくとも現時点では臨床上の問題を指摘できなかった。