[II-P05-2-03] 左側部分肺静脈還流異常遺残に対する3例の手術経験
Keywords:部分肺静脈還流異常症, 垂直静脈, 人工血管
【背景】左側部分肺静脈還流異常(PAPVC)に対する至適介入方法は明らかでない.総肺静脈還流異常(TAPVC)術後の左側PAPVC遺残に対する修復術を行った3例を検討する.【症例1】20歳女性. 体重46.3kg. 下心臓型(3)TAPVC術後, 左PVO. 左上下PVは垂直静脈を介し門脈へ還流していた. 肺体血流比1.53で右室拡大を認めた. 術中, 右肺静脈と冠静脈洞の間が挟く, 吻合口径を確保するために左房後壁から右房後壁にかけて約20mm斜切開した. 垂直静脈を離断し切開部へ吻合した. 心房中隔は自己心膜を右房側へ偏位させて縫合し, 再建した. 術後6年が経過しPVOを認めない.【症例2】35歳女性. 体重53.3kg. 上心臓型(1a)TAPVC術後. 垂直静脈を低位で結紮したためと思われる左上PAPVC遺残を認めた. 肺体血流比1.6であり, 右心系の拡大と心房性不整脈のため外科的介入に至った. 左心耳を切開し, 10mmリング付きePTFE人工血管を左房内へ挿入しダンク法に準じて固定した. 人工血管と垂直静脈を端側吻合し, 垂直静脈-無名静脈合流部は結紮した. 術後5年が経過しPVOを認めない. 【症例3】5歳女児. 体重20.9kg. 混合型(1a+2a)TAPVC術後. 左上PVは未修復であった. 術後2ヶ月で左下PVOを発症しsutureless法で修復したが, 左下PVは閉塞していた. 左肺上下葉間の肺静脈シャントが増生し, 左上下PVは垂直静脈を介して無名静脈へ還流していた. 肺体血流比1.68で右室拡大があり, 右肺静脈圧の上昇を認めた. 左心耳から左房天井を約30mm切開し, 心耳内の肉柱を切開した. 垂直静脈を離断し左心耳から左房天井へ直接吻合した. 術後2年が経過しPVOを認めない.【まとめ】全ての症例で術後PVOを認めていない. 吻合部の狭窄予防のため, 周囲組織の十分な剥離や吻合口を大きく切開することは重要である. また, 成人体型であれば人工血管を使用した再建も選択肢の一つである.