[II-P05-2-06] VSDのあるボーダーライン左室症例に対する二心室修復を目指した治療戦略
キーワード:ボーダーライン左室, BVR, SVR
【目的】二心室修復術(BVR)は術後に良好な血行動態が期待されるが、左室容積が小さい場合は単心室手術(SVR)を選択せざるを得ない場合がある。しかし、房室弁逆流、肺高血圧、肺静脈狭窄などがあるといいFontanにならない可能性がある。当院では僧帽弁通過血流を姑息術で増加させ、左室容積の増大を促すことによりBVRを目指している。【方法】2022年までで、VSDがあり、形態的に左室を体心室としたBVRが可能で、心エコーで左室拡張末期容積(LVEDV)が40-70%NormalであったBorderline狭小左室症例に対してBVRを目指した姑息術を施行した10例を対象とした。【結果】初回姑息手術としてPA banding5例、BT shunt3例、RV-PA shunt2例が施行され、同時にPAPVR修復術1例、VSD作成術1例、心房中隔作成術1例、心房中隔拡大術1例、VSD拡大術1例、Arch repair1例、Norwood 1例、ASD閉鎖術1例を施行。2回目の姑息術としてBT shunt 1例、PAP+RV-PAshunt+ASD拡大1例、VSD拡大2例、RV-PAshunt1例、LSVC ligation 1例、僧帽弁上狭窄解除術1例が施行された。姑息術後、肺炎で1例死亡した。7例が中央値26ヶ月でBVRに、2例が中央値20ヶ月でGlenn手術に、内1例が18ヶ月でFontan手術に到達した。BVR術後37日に敗血症と心不全で1例、Glenn手術後7ヶ月に感染から心不全増悪で1例死亡。Palliation前後でLVEDV 中央値51.7%N(24.7-60.9) vs 82.9(58.2-137.2)(P=0.0039)、MVDは中央値66%N(40-77) vs 67%N(55-97)(P=0.0156)と優位に増加した。平均観察期間は8.9年で、生存7例でNYHA I、BNP中央値53、BVR後の1例でMVR、1例でreRVOTRを施行。【結語】VSDのあるBorderline狭小左室を伴う複雑心奇形に対して姑息術により左室容積の増大が得られBVRに到達する症例が多く、循環動態も保たれていた。左室容積が十分増大しなかった場合にSVRに転換できるように注意する必要がある。BVRがSVRより優位かはさらなる検討が必要である。