[II-P05-2-07] 混合型肺静脈還流異常症修復術後に左心耳摘出術を施行した1例
キーワード:総肺静脈還流異常症, sutureless法, 左心耳
【はじめに】総肺静脈還流異常症(TAPVC)に対する修復術では、術後肺静脈閉塞(PVO)のリスクを考慮して術式を選択する。今回、混合型TAPVC(Ⅰb+Ⅲ型)修復術後に左心耳血栓が疑われた症例を経験したので報告する。【症例】5歳男児で、日齢2にTAPVC修復術を施行した。術中所見で門脈に還流する右中・下肺静脈と左肺静脈は、左右合流部が心膜と離れており、sutureless法で左心房の下方背側に肺静脈を吻合し、上大静脈に還流する右上肺静脈は放置した。血栓形成によるPVOを懸念し、術後、シロスタゾールの内服を開始した。しかし、生後4ヶ月にPVOを認め解除術を施行した。術中所見で肺静脈切開部の狭小化を認め、病理所見で切除した隔壁は血栓付着後の内膜肥厚と心膜の虚血性変化を認め、血栓形成が影響したと考え、術後、ワーファリンの内服を追加した。以後、PVOなく経過したが、5歳時に施行した定期検査で左心耳血栓が疑われた。経食道心臓超音波検査で「もやもやエコー」所見、造影CT検査で左心耳の拡大と早期相の造影不良所見、心臓MRI検査で左心耳内血流の流速低下を認めた。また、4D flowを用いた血流解析で肺静脈血流は左心房の下方背側から上方に向かい、左心耳内でうっ滞する所見を認めた。将来的な血栓塞栓症のリスク回避と、抗凝固薬中止を目的に左心耳摘出術を施行した。術中所見で肉眼的血栓は認めなかったが、病理所見で血流うっ滞による血栓付着の進行所見を認めた。【考察】sutureless法により、本症例のような混合型などのハイリスク症例に対する初回手術や、PVOに対する再手術に対して、術後早期の良好な結果が得られる報告が増えている。しかし、本症例のように術後の左心房の血流動態の変化により、術後遠隔期に左心耳血栓形成のリスクを認めるなど、新たな問題点が明らかになった。【結語】TAPVC術後のフォローでは、PVOの発症だけでなく、左心耳血栓のリスクも念頭に置くことが必要である。