[II-P05-2-08] 術前心エコー所見に基づいた心室中隔欠損症に伴う僧帽弁逆流の形態的特徴
キーワード:僧帽弁逆流, 心室中隔欠損症, 心臓超音波検査
【背景】心室中隔欠損症(VSD)において、逸脱や裂隙などの弁尖異常を有しない機能的僧帽弁逆流(MR)を合併することがある。術後早期のMR残存は遠隔期におけるMR増悪のリスク因子とされる。【目的】MRの機序、僧帽弁形成術の要否判断における心エコーでの評価項目を明らかにする。【方法】対象は2020年1月から2022年12月に当院にて1歳未満でVSDに対し一期的心内修復術を行った79例。僧帽弁逸脱や裂隙などの弁尖異常を伴う症例は除外した。MR 1°以上を有する群をMR群、それ以外の症例を対照群とした。MR群と対照群で左室拡張末期径、長軸像と四腔像僧帽弁輪径(Z score)、弁尖接合部長、長軸像における弁輪から接合点までの距離、またカテーテル検査結果を比較した。【結果】MR群18例(23%)、対照群61例(77%)であった。MR群、対照群の順に中央値は手術時年齢4.2ヶ月(3.5-6.1)、3.2ヶ月(2.4-4.8)、手術時体重5.2kg(4.8-6.1)、5.0kg(4.1-7.9)と有意な差はなかった。肺体血流比、肺動脈圧、左房圧、左室拡張末期圧等のカテーテル検査値に有意差はなかった。エコー所見では、左室拡張末期径Z=3.7(2.7-5.3)、2.6(1.0-4.5)、長軸僧帽弁輪径Z=2.7(2.0-4.3)、1.5(0.4-3.3)、横径Z=3.6(2.7-4.0)、2.1(0.8-3.5)、前方弁輪-接合部間距離12.9mm(11.8-14.4)、10.8mm(9.8-12.8)についてMR群が有意に拡大していた。接合部長2.9mm(2.5-3.4)、3.5mm(3.1-3.9)はMR群で有意に短かった。僧帽弁輪径の縦横比は1.06、1.04と差がなかった。MR群においてVSD閉鎖単独13例(72%)のうち4例(31%)に軽度MRが残存した。術後MR残存を目的変数としたROC曲線では接合部長のカットオフ値を2.5mmとすると感度90%、特異度83%、AUC 0.917であった。【考察】VSDにおいて、MR合併例では弁輪拡大に伴い接合長が短縮する。接合部長は弁形成術の適応判断の一助となる可能性がある。