[II-P05-3-01] 失神は今や小児IPAH/HPAHの重症リスク因子ではない
Keywords:小児肺高血圧, 失神, 重症リスク
【はじめに】小児の特発性肺動脈性肺高血圧・遺伝性肺動脈性肺高血圧(IPAH/HPAH)では失神で発症する場合が特徴の一つであり、2013年の第4回国際肺高血圧シンポジウムで小児肺高血圧の重症リスクとして提示されたが、2018年の第5回会議では削除された。数多くの肺血管拡張薬の出現で治療環境が変化しており、失神が小児IPAH/HPAHの重症リスク因子となり得るかを評価した。【対象と方法】1978年4月~2023年1月までの間に当科で入院歴のあるIPAH・HPAH 49例(男児26例、女児49例)。診断時年齢3-16歳(中央値12歳)。うち初診時失神が主訴になっている患児は11例。 初診時WHO-FC、カテーテル検査結果、BNP値、運動耐容能(6分間歩行距離・Peak VO2)及び治療開始後1年の同様の項目、死亡・肺移植をeventとしたevent-free-survival(EFS)を診療録から後方視的に検討した。【結果】初診時の状態ではWHO-FC・BNP・運動耐容能には失神群(S)と非失神群(NS)では差が認められず、肺動脈圧・肺血管抵抗・心係数でも有意差は認めなかった。6分間歩行距離はS群で低い傾向(p=0.061)が見られ、カテーテル検査の収縮期血圧のみがS群で優位に低値であった(p<0.05)。治療開始一年後ではこれらの差も無くなった。EFSは診断後6年で両群とも50%を切っていたが、有意差は認めなかった。(Log-rank p=0.40)。また治療介入開始後の失神は全例で認めなかった。【考察】小児IPAH/HPAHにおける失神は運動時に発生しており、安静時の状況の重篤度を必ずしも反映しない。治療開始後は運動制限等がなされ失神は見られなくなるため、その後の重症度も反映できない。失神が小児肺高血圧の重症リスク因子からはずれたことは妥当な判断であったと考えられる。