第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

肺循環・肺高血圧

ポスター発表(II-P05-3)
肺循環・肺高血圧1

2023年7月7日(金) 09:50 〜 10:40 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:高月 晋一(東邦大学医療センター大森病院小児科)

[II-P05-3-07] 重症肺高血圧症を合併した小児に対する在宅NO療法の導入

杉谷 雄一郎1, 宗内 淳1, 田中 惇史1, 古賀 大貴1, 江﨑 大起1, 山田 洸夢1, 渡邉 まみ江1, 城尾 邦彦2, 落合 由恵2 (1.JCHO九州病院 小児科, 2.JCHO九州病院 心臓血管外科)

キーワード:肺血管拡張薬, 先天性心疾患, 肺静脈閉塞

【背景】一酸化窒素(NO)吸入療法は重症肺高血圧症(PH)に対して有効な治療だが、離脱困難な場合は入院の継続を余儀なくされる。長期入院から在宅NO吸入療法に移行した症例を経験した。【症例】2歳男児。在胎39週1日、2850gで出生。総肺静脈還流異常症 Ib型と診断し生後7日に修復術を施行。術後肺静脈狭窄(PVO)が進行し、生後2か月時の心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧 53mmHg、肺血管抵抗値9.0 Wood unit・m2 と高く重症PHであった。生後3か月に肺静脈狭窄解除術を実施したが、術後も重症PHが持続したためNO吸入療法を導入した。しかしPVOが再発し生後5か月時に右肺静脈再解除術、左肺静脈ステント留置術、心房中隔欠損作成術および肺生検を実施した。肺生検では末梢肺静脈および肺動脈閉塞病変(Heath-Edwards分類Ⅲ)を認め、タダラフィル、セレキシパグ, マシテンタンの肺血管拡張薬3剤併用療法を追加した。生後8か月時にPVOを再発し経皮的肺静脈バルーン拡大術を実施した。生後10か月時にNO吸入中止試験を行ったが、平均肺動脈圧は80から112mmHg, 肺血管抵抗は19.5から28.7 Wood unit・m2へと悪化しNO吸入療法からの離脱が困難であった。その後も1-2か月毎にPVOの悪化を繰り返し、その都度経皮的肺静脈バルーン拡大術を実施した。入院でのNO吸入療法を1年以上継続していたが、2歳10か月時に訪問看護や在宅医と連携して工業用NOによる在宅NO吸入療法を導入して自宅退院することができた。退院後合併症や機器の大きなトラブルはなく1年3か月の間自宅で過ごすことができた。【結論】在宅NO吸入療法は有効かつ安全で、重症PHの児や家族のQOLを高める治療法である。