[II-P05-4-02] 頻拍による循環不全のため亜全摘出術を実施した心臓毛細血管腫の新生児例
Keywords:胎児心臓腫瘍, 心臓毛細血管腫, 選択的冠動脈造影
【背景】心臓血管腫は小児原発性心臓腫瘍の約2%を占める稀な疾患である。時に心嚢液貯留や不整脈を伴い、血行動態の破綻をきたす場合があるが、心臓血管腫の外科的な切除基準および切除範囲に関して統一されたコンセンサスはない。【症例】日齢2の女児。母体31歳、2経妊1経産。在胎28週の胎児エコーで右房壁に接する22×19 mmの内部不均一な腫瘤および心嚢液をみとめた。胎児MRIで腫瘤はT2強調画像で心筋と等~高信号、T1強調画像で点状の高信号をみとめ、奇形種または血管腫の可能性が示唆された。胎児水腫を示唆する所見はなく、可能な限り妊娠継続の方針とした。しかし腫瘤および心嚢液は経時的に増大し、在胎33週0日に胎児頻脈および胎児水腫をみとめ、緊急帝王切開で出生した。Apgar score 1分値3点(5分 挿管)、出生体重2,430 g。日齢1に実施したコントラストCTでは、腫瘤は石灰化を伴わない不均一な小葉状腫瘤であり、血管腫が示唆された。また選択的冠動脈造影で右冠動脈由来の栄養血管が4本描出された。出生後から治療抵抗性の心房頻拍および心房粗動をみとめ、血行動態が不安定となり、日齢2に腫瘤切除術を行った。術中所見では右房前面を占拠する42×32mmの腫瘤をみとめ、右房壁とともに腫瘤を亜全摘した。病理組織所見で一層の内皮細胞を有する不規則な管腔構造をみとめ、免疫染色で第Ⅷ因子、αSMA、CD31およびCD34が陽性であったことから毛細血管腫と診断した。術後頻拍は消失し、現在腫瘤の再増大や心嚢液の再貯留はみとめていない。しかしながら房室ブロックの進行とともにBNP値が上昇しており、ペースメーカー植込みを検討している。【考察】心臓血管腫は発生部位、大きさ、数および臨床症状から、個々の症例に応じて治療方針を決定する必要がある。切除範囲および術式の決定には、複数のモダリティを組み合わせた中長期的な視点でのベネフィットリスク評価が重要である。